18/124
東公先生 小石を語る
東公先生道を歩きたる時に沓中に小石入る。
小石沓の先に留まるゆえに東公先生これを幸いとして小石を出さずそのまま歩く。
暫し歩きたるに小石動きて踵の下に入る。
東公先生痛しとて跳ねる。
東公先生慌ててて沓を脱ぎて沓を逆さにして振るに小石落ちず。
また履きて小石のあらわれるを恐れつつ歩むに小石沓中を動く。
東公先生すぐに沓を脱ぎて振るに小石落ちる。
東公先生いわく。
小石入りて直ちに小石取り出さば痛みもまたおそれもなきものを。
いずれ小石の東公の足を痛めつけるを知りたるに、小石の沓先に入りたるを幸いと勘違いせり。
小石の沓先に入りたるは不幸と心得るべきなりしかと。