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東公先生 麺を語る
街に麺を売る店あり。
味や値平凡なるが故に客増えず。
店の主人東公先生を訪ね来て知恵を借りんとす。
東公先生かつて天下を旅せし時に食したる麺の数々語りて、この地にて好まれる麺を教えたり。
主人礼を言うのみにて帰る。
その主人東公先生の言に従いて麺を作り、客多いに増える。
されど暫くして客また減る。
近くに同じ麺を売る店現れたる故なり。
主人東公先生の元を訪れていわく。
東公先生、新たなる店の主人に麺の作り方を教えたるかと。
東公先生いわく。
是なりと。
主人いわく。
何故教えたるかと。
登校先生いわく。
新たなる店の主人汝の店に行き汝の店内に、東公先生直伝美味極致新麺と書かれたるを見て我に作り方の教え乞いにきたり。故に我教えたりと。
主人いわく。
何故我以外に教えたるかと。
東公先生いわく。
教えざる理無きが故にと。
やがて新麺の味と値凡庸なる元の店、客減るという。