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東公先生 間諜を語る
ある男、妻と子を残し突如として街より姿を消す。男に書が届きたるすぐ後という。
妻東公先生の元を訪れ男の行方を探す方法を尋ねる。
東公先生妻に問いていわく。
爾の夫、届きたる書を如何にせしかと。
妻答えていわく。
焼き捨てしと。
東公先生また問いていわく。
これまで爾の夫に書届きたることあるかと。
妻答えていわく。
有り。されど全て焼き捨てしと。
東公先生さらに問いていわく。
爾の夫書を送ることあるかと。
妻答えていわく。
有りと。
東公先生最後に問いていわく。
爾の夫、書を送る前にいかなることせしかと。
妻答えていわく。
文武の家に物を売りに行きしと。
東公先生いわく。
爾直ちに身を隠すべしと。爾の夫は間諜ならん。
かく言いて東公先生街の役人に急報して街難を逃れたり。