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東公先生 遠方の珍味を語る
東公先生の元に、数か月前に遠方の知人に送るよう頼みし珍味届く。
その珍味かつて東公先生の旅に出でたる時に食したるものなり。
東公先生家人と共にその珍味を食す。
家人いわく。
これまさに珍味なり。されど美味にあらず。東公先生美味を好むに、何故あえて美味ならざる珍味を求めるかと。
東公先生答えていわく。
東公かつてこの珍味を産する地を訪れたものなり。
その地の政よく国を治めて人心穏やかなり。
東公またその地を訪れたきも難し。
故にその地の珍味食して懐かしまんとすと。