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東公先生 蛇の抜け殻を語る/東公先生 親子を語る
東公先生 蛇の抜け殻を語る
東公先生、庭にて蛇の抜け殻を見つける。
家人恐れていわく。
抜け殻あるということは、この家に蛇が住まうことの証しなりと。
東公先生いわく。
蛇足は無くとも這い回りて動くものなり。この家に住まうとは限らずと。
家人いわく。
東公先生他の家に赴くことあれども、先生の衣この家の他に置くことなし。
蛇も同じなりと。
東公先生笑いていわく。
理ありと。
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東公先生 親子を語る
東公先生ある日街を歩きたる時に、嬰児を抱きたる女に遭う。
東公先生の良く通いたる店の者なり。
女いわく。
我、少し前にこの子を産むと。
東公先生顔を子に近づけていわく。
この子汝に似て愛らしき子なりと。
その子笑いて東公先生の髭を掴み放さず。
東公先生いわく。
この仕草も汝に似て愛らしと。