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東公先生 広告塔を語る
ある時布を商う者、布を東公先生に見せていわく。
東公先生、この布にて衣を作りて街を十日歩かれなばこの布の代いらずと。
東公先生布を見るにその質良からず。
故に東公先生、この申し出を断る。
次の日、また同じ布を商う者、布を東公先生に見せていわく。
東公先生、この布にて衣を作りて街を十日歩かれなばこの布の代いらずと。
東公先生布を見るにその質良し。
されども東公先生直ちに答えず、人を遣わせての布を商う者の店の品を検めさせる。
使いの人帰り来て店の品、質悪しという。
東公先生いわく。
東公この布にて造りし衣を着て歩かば、汝、東公の衣我が店の布にて作ると街人に告げん。街人我が名を信じて質の悪き布を買うこととならん。これ東公の名を汚すこととなる。
東公先生かく言いて、商う者の申し出を断る。