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東公先生 怪談を語る
近くの池に石を投げ込みて遊ぶ童らあり。
東公先生通りかかりて童らに向かいていわく。
汝らの如く石投げ入れ池に落ちて死する童あり。
稀に同じ遊びをする童と技比べせんとて池にひきこみ殺す。
汝らの友皆生きておるかと。
童ら恐れて池より去る。
ある人この話聞きて東公先生にその死する童恐ろしという。
東公先生これに答えていわく。
そのような童を池に引き込む死せる童などおらず。
童ら池に落ちて死すること防がんがためあえて恐ろしき話を創りしなりと。
ある人問いていわく。
童に恐ろしき思いをさせずとも、池に近づくを禁ぜばよしと。
東公先生いわく。
池に近づくを禁ずる理をあからさまに教えざれば、童ら再び近づかん。
故に童らが池に落ちたれば如何なる末路となるかを告げたりと。