106/124
東公先生 石を語る
東公先生人と共に道を歩きたる時石に躓く。
その石、轍の深く掘れるより現れたるが如し。
東公先生この石をよく観ていわく。
この石、幾度も何かに当たりたるが如き痕あり。
故に東公より前にこの石に躓きたる者あり。
何故先に躓く者この石を道の端に寄せざるかと。
東公先生と共に歩きたる者いわく。
東公先生の言うは尤もなれど、轍に未だ多くの石あるが見ゆる。
東公先生の石を端に寄せるとて新たな石現れんと。
東公先生いわく。
石の現れる度に端に寄せれば暫しは躓くもの現れず。
道を通る者皆心がければやがて道より石消えんと。
まず東公この石を端に寄せんと。