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東公先生 仙人を語る
東公先生の住まう地の山に古き庵有りと街人言う。
そこに仙人住まうとも噂す。
東公先生、仙人に会わんとて知人と共に庵目指して山に登る。
その山深き森有り、岩の露わになるところ有り。
如何にも仙人の住まう山ともみゆる。
東公先生、やがて古き庵を見いだす。
屋根破れ壁落ち荒れること甚だし。
東公先生共に来たる人にいわく。
いざ帰らんと。
共に来る人東公先生に問いていわく。
東公先生何故帰らんとすると。
東公先生いわく。
仙人ここに住まわざるが故庵かく荒れる。
またもし仙人ここに住みて庵荒れたる幻を東公らに見せるならば、我らに会う意なし。
故に帰らんとすると。
これより皆帰る。
街への途上、東公先生いわく。
皆街にて言うべし。仙人には会わずと。
共に来る人東公先生に問いていわく。
何故そう言うべきかと。
東公先生いわく。
街にて、山の仙人より伝えられりと称して効なき薬売る者あり。
これを防がんがためなりと。