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おヌメの日記  作者: 七宝
4/21

10月5日 前編

 6時に起きて、ミユさんと一緒に朝ご飯を作りました。メニューはトーストとサラダとハムエッグでした。


 準備を終えて食卓に行くと、わたしのトーストがぺっちゃんこになっていました。奥様がこちらを見て笑っていました。

 味はあまり変わらないので気にしません。


 恭輔(きょうすけ)様と一緒に家を出ました。


「おヌメ、家帰ったらまたサッカーの特訓な!」


「お家帰ったらご飯作らないと」


「なに? 口答え?」


「⋯⋯やります」


 学校に着くと、職員室に通されました。転校生は遅れて登場するものなのだそうで、先生と一緒に教室に行くことになりました。


 職員室に入った時、一斉に騒がしくなって、先生たちがみんなこっちを見ました。

 でも、すぐに静かになってしまいました。わたしの顔を見たからでしょうか。


 担任の先生からは「何かされたらすぐに言いなさい」「つらかったら我慢せず休みなさい」と、わたしがいじめられる前提で説明を受けました。


 先生と一緒に教室に向かいます。先生は歩きながら、わたしのお尻を触っていました。これって良くないことですよね?


 教室に着くと、まず先生が先に入りました。


「今日は転校生が来てるぞ」


 中から先生の元気な声が聞こえます。「今日は」というか、「今日から」なんですけどね。


「ということで、紹介をする。入ってきていいぞー」


 合図があったので入ります。緊張します。

 ガラガラガラ、と戸を開けます。みんなわたしに注目しています。

 やはりみんな騒ぎ始めました。


 しばらくしても大人しくなりません。先生たちとは違って、わたしの顔を見てもビックリしないのでしょうか。恭輔様はいません。


「すげー、オバケだ⋯⋯」


 そんな言葉が聞こえてきました。ビックリはしているようですね。わたしはオバケだそうです。ヒュードロドロドロ。


「おヌメっていいます。よろしくお願いします」


 ありすとおヌメと迷いましたが、今1番呼ばれているおヌメにしました。こっちのほうがしっくり来ますからね。鏡とか見ると特に。


「それって、ヌメヌメしてるから?」


「そうです」


「すげーっ!」


 あれ? わりと好感触な気がします。この男の子は仲良くしてくれそうですね。


 1時間目は国語でした。わたしはあまり頭が良くないので、よく分かりませんでした。入院のせいもあるかもしれません。


 休み時間になると、わたしの机に男の子と女の子が3人ずつくらい集まってきました。ついにわたしにも春が来たんですかね。


「おヌメちゃん、その顔どうしたの?」


 1人の女の子が言いました。


「これは火傷の後遺症なんです」


「ふーん」


 興味ないのに聞いたんですかね。


「キモっ」


 男の子が言いました。腹が立ちますね。


「うるさい」


 わたしは言い返しました。


「は? 転校生のくせに言い返すのか?」


 転校生のくせにとはどういう意味でしょう。


 鐘が鳴ったので、みんな席に戻りました。


 やっぱり授業は分かりません。わたしには難しすぎます。

 やがて、給食の時間になりました。わたしが学校で1番好きな時間です。


 給食当番が配膳してくれます。コッペパン、ミネストローネ、サラダ、牛乳。久しぶりの給食です。


 いただきますの挨拶をしてパンに手を伸ばすと、さっきの男の子がわたしのパンを奪いました。そんなにお腹が減っているのでしょうか。


「お前のパンなんか、こうだ!」


 そう言って男の子はパンを床に叩きつけました。そして、バレーシューズで踏みつけました。この地域ではこれが流行っているのでしょうか。


 わたしはその子の机からパンを拝借し、ちぎってミネストローネにつけて食べました。

 男の子は驚いたような顔をしたあと、ゆっくりとわたしに近づいて来ました。


 次の瞬間、頭に鈍痛が走りました。ちょうど脳天を殴られたようです。痛いです。


「パン泥棒! 死んじまえ!」


 そう言いながら男の子はわたしの頭を何度も殴ります。痛いです。

 もちろん私もやり返します。


 男の子のあそこを握りつぶします。全力で。


 男の子はその場にうずくまりました。まだまだ終わりません。追撃をします。背中を何度も蹴ることで背中をガードさせ、あそこをノーガードにします。


 そこでまたあそこに蹴りを入れます。


 男の子は気絶しました。いい気味です。


 教室内は騒然となり、すぐに先生が保健室に運んでいきました。わたしが頭を殴られていた時は気にせず給食を食べていたのに、不思議です。


 男の子は救急車で病院に運ばれ、睾丸破裂と言われたそうです。

 その間わたしは、クラスの子や先生からたくさんのお叱りを受けました。みんなわたしが悪いと言うのです。


 わたしは帰ることになりました。後日男の子の両親が話しに来るそうです。


 下駄箱に行くと、わたしの靴がなくなっていました。あの男の子の靴があったので、代わりにそれを履いて帰りました。

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