神様
非常に残念なお知らせがあります。
屋敷の人は執事のおじさんと運転手の湯島さんとミユさん以外全員亡くなってしまいました。わたしのせいです。
でも正直清々しています。
でもでも⋯⋯ダメですよね、こんなの。あれだけ赤ちゃんを殺すなと言っていたわたしが人殺しになっちゃうなんて。
ミユさんやおじさん達にも火傷を負わせちゃったし、本当にダメですね、わたし。
思い返してみればわたしってとんでもない悪者ですよね。
赤ちゃんを殺すなって言ってた時点でわたしはお父さんとお母さんを殺してましたし、マシロちゃんを殺したのもわたしみたいなもんですし。
わたしって生きてる資格ないですよね。
価値もないですね。
理由も⋯⋯
そうだ、わたし、生きる理由がもう無いんだ⋯⋯
帰る場所もないし、家族もいないし、知り合いもいないし、敵しかいないんだ。
そんなの、地獄じゃない。
そうだ、あそこで死のう。
マシロちゃんが捨てられた、あの河川敷に行こう。川で溺れて苦しんで死のう。出来るだけ苦しんで死のう。
はぁ。結局わたしって何だったんだろう。
神様って本当にいないんですね。いませんでしたもんね。ちょっとくらい登場してくれてもよかったと思うんですけどね。1回くらいお願い叶えてほしいもんです。
お願いかぁ。
お願いってなんだろう。今のわたしに願い事なんて⋯⋯
お金?
お家?
⋯⋯家族ですね。
お母さんに会いたい。
優しかった頃のお母さんに、会いたいよ⋯⋯
なんてね。
神様なんていませんから。いたらこんなふうになってませんもんね。はは。
確か次のT字路をあっちに⋯⋯
あっ、人がいた!
いたた⋯⋯
ぶつかっちゃった。
「大丈夫? ごめんね」
優しそうな女性の声です。
「こちらこそすみませ⋯⋯えっ!」
なんということでしょう。顔を見た瞬間に変な声が出ました。
この人、お母さんに似てます。そっくりってほどでもないですけど、少し似ています。
さっき神様にお願いしたばかりなので、ビックリしました。もしかしたら本当にいるのかもしれませんね、神様。
話しかけてみようかな⋯⋯
どうしよう。
「どうしたの? 大丈夫?」
うーん、どうしよう。話しかけていいのかなぁ。
「もしかして、迷子?」
「いや、違います。大丈夫です、それより、実はわたしのお母さんに⋯⋯」
「ねぇお嬢ちゃん」
お嬢ちゃん!!!
久しぶりに言われました。
「なんですか?」
「子どもが敬語使ってると変よ?」
「そうですか?」
「『そうですか?』じゃなくて、『そう?』ね!」
「む、難しいなぁ」
大人と久しぶりにタメ口で話しました。
それから数分間、他愛もない話をしました。優しかった頃のお母さんと話しているようで、とても幸せでした。
最後に神様がお願いを聞いてくれました。いたんですね。
「ところでお嬢ちゃん、お菓子食べたくない? おいしいお菓子買ってあげるからおばさんと一緒に来ない?」
お菓子。
「うん、行く!」
分かってます。
でもわたしは幸せなんです。
行ってきます。
これにて完結です。お付き合いいただきまして、ありがとうございました。




