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悪役転生~推しの為なら、魔王もぶっ飛ばすッ!!~  作者: 赤坂しぐれ


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第十六話 バグ技にはロマンが詰まっている。昨今の直ぐにバグ修正されるのは少し寂しい……


「魔王を?」

「ぶっとばす?」

「ばす?」


 ユピテル様とアイリスとアンネが揃って首を傾げる。うむ、可愛い。


「そうです。以前説明しましたが、私は勇者ではありません。なので、魔王を倒すことはできないのです」


 魔王を倒すには『勇者の証』と呼ばれる特殊な……なんだろう? 一応ゲームではアイテム扱いではあったが、イベントを見る限り称号の様な、ステータスの一部の様なものなのか? とにかく、勇者の証が必要である。

 中盤の試練イベントでフレイア達は難題をクリアし、その勇気と力を示すことで手に入るものだ。ステータスが大幅に上がり、最終決戦に必要な技のひとつも覚えることができる。

 ちなみに、この間キュプロクスの街で一瞬だけ出会った終盤でパーティーに加入するフォルセは最初からこれを持っている。イベントの都合とはいえ、試練はどうしたのだろう?


「ふむ、それはわかった。じゃが、逆に聞こう。その勇者の証なしに、どうやって魔王をぶっ飛ばすじゃ?」

「それはですね……えーっと、なんといいましょうか……物理的に、といいますか」

「なんじゃ、歯切れが悪いのう。まぁ、おぬしのことじゃ。また突拍子も無いことをするんじゃろうて」


 ユピテル様はジト目でこちらを見つめながらため息を吐き出す。

 なんでだ。俺は別に突拍子もないことなどひとつもしていないぞ。サガ民であれば常識の範囲内である。まぁ、これから行うのはある主酷いバグ技のひとつだから、そこは流石に言い逃れができないが。


「それで、御主人様は何をするんです?」

「ちょっと外見を魔物に変える」

「……は?」


 アイリスがつぶらな瞳をさらに丸くして言葉を失う。

 いや、まぁそうだろうね。魔王をぶっ飛ばすとか言い出したと思えば、次は姿をモンスターに変えるだからな。


「アイリスが知っているかはわからないが、獣系のボス……あーっと、偉そうな奴にテュポーンというやつがいるんだ」

「テュポーン様ですか! 魔王様の幹部が一人ですね! 私たち獣魔物の憧れの存在です!」

「そう、そのテュポーンだ。それに変身する」

「ふぇ!?」


 驚くのも無理はない。テュポーンはある種、獣系魔物の頂点と言っても過言ではない存在だ。実際に戦うとすれば、他に強い獣系の魔物は存在する。だが、このテュポーンはまずボスでありながら、ゲーム本編中に倒すことは事実上不可能であるのだ。

 テュポーンと戦う時は大体がイベントボス戦であり、普通にプレイをしていてもまず勝つことはできない。かといってレベルカンストプレイやチートを使って勝てるということでもない。

 理由は、その膨大すぎるHPにある。その数値、おおよそ18万。どれだけ鍛えた状態で挑んでも、行動順がテュポーンに移る前に与えられるダメージは、最大ダメージの9999×4(四回攻撃)×4(パーティー人数)=159984。テュポーンはHPが10000減ると行動がイベントに入るので、ギリギリ削って一気に終わらすということも出来ないのだ。


 それはさておき、テュポーンに変身する理由は別にある。というか、別に姿形はあまり関係なかったりする。


「詳しい説明は省きますが、俺が一瞬だけ姿を変えることで、魔王は吹っ飛びます」

「何故に!?」

「そういうものなのです、ユピテル様」


 とある行動をとることで、主人公達の……いや、ゲーム内のキャラクターの姿が変わる。中身はそのままに。

 これはサガ民の中では『振り逃げダイナマイト』と呼ばれるバグ技だ。詳しいことは解析民ではないのでわからないが、どうやら番号で管理されているキャラクターグラフィックの順番がひとつずれ、この現象が起こるそうなのだ。

 そして、魔王軍幹部であるイザーグの次にあるのが同じく幹部の一人であるテュポーンであり、そこから少しして魔王の順番がある。

 ところが魔王の次はと言うと、イベントキャラクターのカテゴリーになってしまうが故に、一番最初のOPでフレイアに呼び掛ける天の声に……つまりは、透明なキャラクターになってしまうのだ。


 そして実はこの天の声、OPの流れる雲の中で常に動き続けているという変なプログラムが存在するのだ。とはいえ、それはあくまでも内部プログラムの話。実際は魔王城にいけば透明なまま玉座に座っているし、話せばラストバトルに突入する。

 なので、別に変化したところで本当に魔王を空の彼方に飛ばすことはできない。だが、考えても見てほしい。

 いきなり魔王が姿を消し、幹部の一人である鎧騎士が魔王になったらば、その混乱は計り知れないだろう。


「えーっと……つまり、魔王への嫌がらせというやつじゃな?」

「時間稼ぎですよ。その間、アンネは確か……いや、アンネのままか」


 思い出してみると、グラフィック順で言えば通常アンネの次は確か衣装違いのアンネのはず。ただ、その次はイザーグによって殺害された見るも無惨なアンネであるが。


「アイリスは魔物だから問題なし。一番の懸念はユピテル様です……」


 ゲームのデータにユピテル様は存在していない。一応没データにそれらしきものはあったけれど、そこにあったのは天の声と同じく透明なデータだけだった。


「まぁ、ワシはなんとかする。おぬしの好きにするが良い」

「いいのですか? こればかりは、私でもどうなるか予想がつきませんが……」

「いざとなれば姿を隠すことぐらい出来る。村の者達の信仰心が貯まってきておるからのう」


 正直、マジでどうなるかわからない。が、それでも俺は誓おう。ユピテル様を……ロリ神様を信仰すると。


「まぁ、言っても直ぐには出来ないんですけどね。ちょっと用意が必要なので」

「なんじゃ、そうなのか。どうなるものかとワクワクしておったのに」

「まぁまぁ。割りと直ぐに出来ますとも……私が技を覚えればですが」


 オリンポス・サーガを代表するシステムに、技の閃きというものがある。

 これは戦闘中に特定の条件が揃ったとき、一定の確率で当たらしい技を覚えるというもので、サーガシリーズの代名詞とも言える。

 特定の条件というのはステータスは勿論のこと、そのキャラクターに設定されている閃き適正であったり、敵と自分とのレベルの差など、色々と複雑に絡み合っている。基本的な技であればほとんどのキャラクターが閃けるのに対し、上位の技になるほど特定のキャラでないと閃けないのはこのシステムによるものだ。


(イザーグ)がどんな適正を持っているか、正直わからないからなぁ……最悪、アイリスにも頑張ってもらうしかないかもしれない」

「御主人様の為なら頑張りますッ!」

「アンネも! アンネもがんばる!」


 小さな腕を精一杯伸ばしてがんばるポーズをするアンネ。やはり、天使だ。


「アンネはユピテル様と一緒にゆっくりしていてください。あぁ、そう言えば御召物を御用意させていただきました」


 俺はキュプロクスの街でバンガスから貰った衣服を取りだし、アンネとユピテル様に差し出す。アイリスの分も貰ってはいたが、残念ながら犬の姿になってしまったのでお預けだ。

 それがわかっていたのか、若干アイリスの尻尾の揺れに元気がない。

 アンネとユピテル様が木陰に着替えに行っている間、俺はそんなアイリスを慰めるべく二つの頭を交互に撫でるのであった。

元ネタはやると色々(セーブデータ含む)吹き飛ぶダイナミックなアレ。良い子は真似するな(自己責任)

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