第20話:ルミネのお誘い
2021/05/25
ヒロインの名前を諸事情により
ルミナ→ルミネに変更しました
すみませんでしたああああ!!(ようやくレギナと一文字被りに気付いた馬鹿作者)
第二都市インティス――冒険者ギルド
「……えっと。ごめんフィリ君。もっかい言ってくれる?」
ニコニコと笑顔を浮かべるフィリの担当受付嬢――実はルミネの担当でもあった――シキが念のため、今目の前の少年が言ったことについて聞き直した。
「はい。ゴブリンシャーマンとオーガを倒しました。でもルミネのパーティは……彼女を除いて全滅してしまって」
「……ルミネちゃん?」
信じられないとばかりにフィリの隣にいたルミネの方を見たシキだったが、ルミネはその通りだと頷いた。
「ですので至急、棺運びの方達を手配してください。せめて、彼女達を家族の下に……」
「……ええ。それはすぐにするけども……彼女達が全滅したのなら、オーガとゴブリンシャーマンは誰が?」
「僕達です。シャーマンは僕が、オーガはルミネが倒しました」
そう断言したフィリを見て、シキはどう返したらいいか分からなかった。
そもそも〝ゴブリンの崖砦〟はDランク以上のパーティでないと受けられない依頼しかなく、【輪舞する剣】に所属していたルミネはともかく、Fランクでしかも現状はソロのはずのフィリがなぜそこにいたのかが理解できない。更に、ゴブリンシャーマンとその配下のゴブリンだけでも、討伐難易度はD~Cランクはあり、オーガを使役しているとなると間違いなくCランクを超えてくる。
それをFランクの冒険者のフィリと、肩書きに実力が伴っていなくて悩んでいるルミネの二人で倒せるとは思えなかった。
だが二人が嘘を付いている気配はないし、そんな嘘を付いたところで何のメリットもない。それにルミネはしっかりとゴブリンシャーマンの牙と骨杖の欠片を持って帰ってきており、少なくとも討伐は為されたということは事実だった。
「一応、ルミネちゃんは【輪舞する剣】の依頼――ゴブリンシャーマンの討伐は達成できたから報酬は受けとれるけども……どうする?」
「はい。それは遺族の方に分配してください。私のせい……かもしれないですから」
俯いたままそう呟いた、ルミネの表情は暗い。
「そう。なら棺運びの手配料もそれから出すわね。あと、ルミネちゃん。絶対に自分を責めないで。私はその場にいなかったし、何があったかは分からない。だけど、貴女は生きて帰ってきた。それは誇るべきことであり、決して悲しむことでも自分を責めることでもないのよ」
シキはそう強い口調で言い切った。
冒険者になる若者は多い。皆が英雄を夢見て、あるいは一攫千金を狙って、冒険者になる。
だが、残念ながら冒険者になった五割の者がEランクに上がる前に死んでいる。そして生き残った者も、冒険者業の過酷さに絶望し、引退していくのだ。
ギルド側の人間としてあまり良くない考えかもしれないが、シキは冒険者なんてなくなってしまえ、とまで思っていた。喜びも悲しみもあるが……あまりに悲しみの方が多い気がするからだ。
そこまでして、なぜ人々は冒険者を目指すのだろうか。それに対しての答えをシキは、未だに見付けていなかった。
「……はい。私、もっと強くなりたいです。もう……誰も死んで欲しくない」
「僕もです。まだ実感湧いてないんですけど……目の前で人が死にました」
フィリの脳裏に、目の前で潰された槍士の男の顔がよぎる。
「だったら……強くなりなさい。誰よりも強く。でも、それが無理なら……いえ、なんでもない」
冒険者なんてやめてしまえ。そう言いかけて、シキは口を閉ざした。
それはあまりに自分勝手すぎる言葉だったからだ。少なくとも――この目の前の二人からは、絶望も諦観も感じ取れなかった。ならば、その言葉は不要だ。
「はい。そうだ、やっと師匠の許可も出たので、僕も依頼を受けていこうと思っているんですけど」
「師匠?」
「あ、そうか。師匠のとこ行ってからギルド来てなかったか。えっと、修練所のカエデさんが師匠で……」
「へ?」
シキは今度こそあんぐりと口を開け、女子としてはちょっとあんまり異性に見せたくないような表情を浮かべてしまった。
そしてフィリの言葉をもう一度頭の中で整理する。
修練所……一昔前は、冒険者になったらまず行く場所として有名だったが、最近は冒険者崩れのたまり場となって、誰も近付かなくなった場所だ。
そしてカエデという名。それで思い当たる名前はもうこの国で一人しかいない。
剣聖。剣の女王、狂虎……異名は数知れず、また冒険者として最高位のSランクを持ちながらもパーティを組まず好き勝手やっているギルドの目の上のたんこぶだった。今は確か修練所を乗っ取って、道場まがいなことをしているそうだが、ギルドも口出し出来ずにいたはずだ。
そんなカエデに弟子入りした……?
「フィリくん。そのカエデって人は……青髪で、細長い独特の剣を使ってて、凄く強くて――言動が無茶苦茶な人?」
「そうです。確か、Sランク冒険者だって言ってました」
「そう……その人に弟子入りしたのね……」
シキはもう何が起きているのか理解が追い付かなかった。
だけどある意味納得も出来た。なるほど、あの人の下で修行したのなら……例えたった一ヶ月ほどでも、ゴブリンシャーマンやオーガは敵ではないのかもしれない。
何よりフィリには一ヶ月前にはなかった、装備はもとより、自信や冒険者としてのオーラみたいなものが備わっていた。何より背は大して伸びていないが、良く見れば身体付きが戦士のそれに近付いていた。
ちょっとだけ格好良くなったかな? とシキが見直していると、
「あの……フィリ君は依頼を受けるということであれば、どこかのパーティに入りますか?」
ルミネがおずおずとフィリへと真剣な表情を向けた。
それに対しフィリは首を傾げる。
「ん? いや、師匠には〝人のとこに入るな、自分で作れ〟って言われてるから、入る気はないよ」
「他のメンバーのあては?」
「んー、ない!」
それを聞いて、ルミネがすーっと息を吸いこんだ。
それはゴブリンの崖砦からの帰り道の間、ずっと考えていたことだ。
もっと強くならないと。何より、もう誰の足も引っ張りたくない。そして自分の過剰すぎる肩書きに惑わされない誰かと一緒に戦い、共に成長したい――そう思っていた。
だから――あえてルミネはこう言ったのだった。
「フィリさん。私は〝七曜〟の魔術師、アガニスのルミネです。私と――パーティを組みませんか?」
こうしてのちに最強のコンビと呼ばれた二人が、パーティを組んだのだった。
ルミネが仲間になったよ! フィリとルミネのコンビをよろしくお願いします!
ここで、序章:冒険者になろう編は終わりです。
次章でガルド達との決着、レギナの成長と新アビリティなど盛りだくさんの予定です。
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