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JOKER  作者: 澪
ー追放から絶望へー
8/9

〜新しい目的〜



黒の仮面に黒のマント。そして漆黒の魔力。何者か知る者はいない。服装は冒険者の最高位に位置する『ACE』に似ているが、それにしては纏っている魔力が全然違う。そもそも()()は何者かもしれないものが歩いていい場所ではないのだ。だが彼の者を見ているすべての兵が動けずにいる。誰も止めることが出来ずにいる。


『彼』が歩を進めるのは、シルドベルト王国、その王宮。誰の許可もなく、その者は歩いている。突然王宮の前に現れたかと思えば、門を自ら開け、少しずつ王へと近づいていく。焦るわけでもなくこの城を我が物であるかのように歩いていく。


そうして辿り着いた大きな門とも呼べる豪華に造られた扉。そこの前に立つ2人の兵士たち。


「そこを開けてもらおうか、王に話がある」


「その前に何者だ、名を名乗れ」


扉の左に位置する、髪は茶色のオールバックで筋骨隆々。帯剣した30代ほどの男が話しかけてくる。

・・・今の俺に対して、臆していない、か。軍事国家ではなくとも強い個は存在するようだ。


「俺の名は・・・そうだな、『ダグラ』。流れ者の軍師といったところだな」


「・・・これだけの魔力を纏いながら軍師だと?冗談もほどほどにしろ!」


もう1人、扉の右に位置する、同じく茶髪だがこちらはサラサラとした髪をおろしている。すらっとした体型で簡単にいうならば女にモテそうな美丈夫が俺に言う。


「冗談ではないさ、俺はこの国の未来の軍師。帝国を倒す・・・いや蹂躙する者だ。俺がこの国を覇道へ導いてやる」


『帝国を潰す』

圧倒的な軍事力、領土を誇る隣の大陸の覇者。同じ大陸にあろうものならこの国もあっという間に飲み込まれていただろう。だがこの国には多少因縁があるのも事実。


だが『あの帝国』を『潰す』?


100人中100人が無理だ、と言うだろう。いかなる知略を持ってしても、いかなる武力を持ってしても。この国だけではどうにもならない。誰もが無理だと思うこれを軍略だけで簡単に成し遂げられるなら、苦労はしない。

・・・だがこの者の持つオーラが普通ではないのもまた事実。


兵としては『絶対に勝てない』、そう思わせるだけの力が実際にあるだろう。


「・・・王への話とはどのような話ですかな?」

「・・・!!兄上!このような者の話を聞くと言うのですか!?」

「この者は私たちが2人でかかってもどうにもならないからな。『王を殺しにきた』のではなく、『王に話がある』と言った。それを確認する」

「どのような話であっても無許可でここに乗り込んでくるような輩です!!」


・・・なるほど。こいつらは兄弟だったのか。


『・・・そこまでにしろ。兄弟で言い争うな。』


先程とは違い、二重に響く低い声も聞こえる。その声には深い憎悪と哀愁が漂っていた。

ただそれよりもその声の特徴を一番に上げるとするならば、『絶対者』


「「・・・・・・!!」」


扉の守護を任されているであろう兄弟は凍りついたように動きを止めた。ありえない量の冷や汗が流れている。


「・・・王に危害を加えるつもりはない。話をするだけだ。だから通してくれ」


息をすることも忘れていた扉の守護者の2人は、その声を聞き動かない体を必死に動かした。

ギィィという重そうな音を立てて、扉が開く。

俺はその開けられた扉に入った。




===




王に謁見する。はっきり言って謁見する者の態度ではないのだが。

俺の前の玉座に座るのは、シルドベルト王国現王、ファーティマ=シルドベルト。美しい金の長髪、色黒な肌をもった20歳かそこらに思える人物。


「それで?軍師とやらが俺になんの話があるってんだ?」


賢王と聞いていたが、思いもよらず軽そうな口調。少し気にはなったが俺は俺の話をする。


「俺の名はダグラ。この国を帝国を超える『強者』とするためにきた。」


「俺が作ったこの国は『強国』ではないが、『栄国』だ。それで満足であるように思えるのだがな?」


「なるほど。やはりこの国は『強国』を目指して作られてはいなかったか」


「・・・ほう。軍師を名乗るだけあって馬鹿ではないようだな」


そう。この国は元々軍事国家を目指してデザインされていない。なぜならこの国は軍事を強化したところで()()()が少ないからだ。この国と大陸続きの隣国は山で隔たれている。それゆえに貿易もほとんどが海経由で行っている。またさらにその隣国へは『魔沸点』の存在する山脈で通ることもできないのだ。

軍を派遣させることも手間であるし、逆に軍が侵略してくるにしても海路か、山越えが必須。

苦労して征服できれば、もちろんうまみはあるが、そこから先への道はないも同然。

だからこそ必要以上に軍を強くしない。そういう割り切った人員の使い方をしていると気づいていた。そして王の言葉で確信に変わった。


「それが理解できる軍師様が、どういう手品を使ってこの国を強くするつもりだ?」


この言葉で王の言いたい事は二つ。一つは現状これ以上軍を拡張するつもりはないこと。

二つ目はその上でどうやって強国にするか。

・・・ふっ簡単なことだ。


「まず、軍を拡張するのではなく他国の味方を増やす」


「そんな簡単に人は集わんぞ。人を集めるには『共通の目的』と『統率者(カリスマ)』が必要不可欠だ」


「そう。だから俺がいるのだ。『多重転移門』」


突如複数開かれたどす黒いその『門』から現れたのは、見るからに強者だとわかる歴戦の剣士。または熟達の魔法士。それぞれ見るからに精鋭だとわかるが、それぞれ別の門から現れる者達は別の国の人間だとわかる。鎧や隊服に刻まれている国旗が違う者だからだ。だがそれもすべて東側の強国のものだとわかる。


「・・・これは・・・こんなに多くの国から?・・・いったいなぜだ・・・?」


その中1人の者が話し出す。


「我々は主より『シルドベルト国軍師ダグラ様』、及び『ファーティマ=シルドベルト王』へ従うため派遣されました。それぞれの国が帝国への侵略を望んでここにおります。それぞれ軍を派遣する用意があることでしょう」

「我々は『軍師ダグラ様の力』へとなるためです」

「帝国に恨みを持つのは我が国も同じです。この方がいれば可能かと」


それぞれが様々な理由を持ち、ここへの参戦を決めた。戦力は不足しない。


「・・・だが、軍を派遣するにも敵国へと直接船をつける必要があるだろう。まさかこの『多重転移門』とやらで運べると?」


「いや、それは可能ではあるが多量の魔力を使う。緊急時以外使用はしないだろう。

だが安心しろ。船さえあれば十分だ」


「・・・何か策があるという事か。なるほどな。」


「もう一つ。集まってもらった者達には俺の特別指導を受けてもらう」


「特別指導とは?」


「ただのしがない訓練さ」


「そうは思えんがな。だがその態度、本当にあの帝国に挑むつもりか・・・。しかもお膳立ては全てされている・・・と。」


ファーティマ王は賢王と呼ばれている。ただでは首を縦に振らない可能性はある。できる事はしたつもりだが。

しばらくの静寂の後、


「ハハハ、面白い。お前がいれば確かにできるかも知れんな。いいだろう。

ただここからは一緒に俺も策を練らせてもらおうか。お前にできることも全て教えてもらうぞ。他にも色々できるのだろう?」


・・・ただでは頷かんか。だが俺の気づけない部分に気づく可能性もあるからな。多少のリスクは飲もう。


「ではこれから正式に俺はこの国の軍師だ」


「ああ、よろしく頼むぞ」


そうして最も大切と考えた国の承認を得ることができたのだった。




新章開始です。これからもよろしくお願いします。

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