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俺とエルフとお猫様 ~現代と異世界を行き来できる俺は、現代道具で異世界をもふもふネコと無双する!~  作者: 八神 凪


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その36 エルフ達の能力


 「みゅ♪」

 「みゃー……」

 「はは、キサラギが困ってるぞ。それで、俺に見せたいものってなんだ?」

 「ふふ、きっと驚くわよ!」


 ネーラが振り返ると得意げに笑い、それがなんなのかは教えてくれない。しかし、現場に到着するとネーラの言葉の意味が分かり、文字通り驚愕した。


 「これは……!?」

 「はっはっは! どうだい、エルフも捨てたものじゃないだろう? まあ、結構苦労したけどね」

 

 何故驚くのか? なぜならそこには昨日失敗したログハウスが立派に建っていたからだ。歪んだ木材はその辺にあるので同じ木は使っていないので、これは乾燥するため放置した木を使って建てたのだろう。


 「でも、乾燥してない木だとまた歪むんじゃないか?」

 「そこは大丈夫。スミタカの持っていた板で見た乾燥小屋だっけ? それをあっちに作ってね。後は魔法で水分を抜いたのさ」

 「おお……」


 見れば小屋の周りにかなりの数のエルフ達が倒れていた。だ、大丈夫なのか?


 「あれは一晩中乾燥作業をしたせいで疲れているだけだから心配ないよ。多分死んでないはずだ」

 「恐ろしいな……」

 「なあに退屈な日常より、こういう方が楽しいからね。スミタカには感謝しているし、他のエルフもスミタカがいつ来るかとか次はどんなことを教えてくれるかみたいな話をしているよ」

 「へえ、それはちょっと嬉しいかも」


 人間、頼りにされるのは悪い気がしないものだ、ログハウスも畑も俺が考えたものことじゃないけど、それが助けになっているなら嬉しい。俺が照れていると、ログハウスからミネッタさんが満面の笑みを浮かべて出てきた。


 「おお、スミタカ! 見ておくれよエルフ達が頑張って建て直してくれたんじゃ! 中も前と同じで、一日過ごしておったが、歪んだりヒビが入ったりということは無かったわい!」

 「ああ、そりゃよかった。すまなかったな、俺の知識がしょぼいせいで迷惑をかけた」

 「気にするな、おかげで雨漏りをしない家ができたのじゃからな!」

 「雨漏りしてたのか……」

 「うむ、その度に修繕をしておってな。板を乗せて草を置きすぎてこんもりしておったわ!」


 釘とか接着剤みたいなものはなく、板を作る技術も拙いので俺の宛がった家やミネッタさんの前の家はマシな方ということだろう。

 それと娯楽も無いので、ちょっとしたことでも刺激があって楽しいのかもしれない。


 「そんなわけで家屋についてはこれでいけそうだ。それと、板張りの家も設計図の中に入っていてね。相談した結果、丸太タイプと板タイプの家を選んでもらうってことになったんだ。後は僕たちでもなんとかなると思うけど、スミタカの意見も聞きたいから協力して欲しいね」

 「もちろん構わないよ。にしても魔法は便利だなあ、まさかこんなに早く乾燥するとは……」

 『魔法はこの世界でも貴重だからね。記憶によると、こっちの世界でも人間は使えないみたいよ? だからハーフエルフを実子に据えて……いや、今言うことじゃないわね』

 「……すまんなお猫様。ワシは家におるから、用があったら尋ねておくれ」


 シュネが言葉を切ると、ミネッタさんは困った顔でシュネを撫でるとそのまま家へと入っていく。まだ別の大陸に居た頃の話のようで、ハーフエルフに何か苦い思い出あったのだろう。

 かける言葉が無いまま、ミネッタさんが家の中へ入っていくのを見送る。俺達はしばらく顔を見合わせて気まずい空気を出していたが、気を遣ったシュネがこちらにくる人物を見つけて声を上げた。


 『あ、ほら、野菜を持ってきた子がいるわよ』

 「あら、フローレね。そういえば他のエルフと一緒に野菜を採っていたんだっけ」

 

 上機嫌、というか顔を赤くして立派なナスにほおずりしながらなにやら呟いている。


 「んふふ……黒くて硬いですねえ。こんなに大きかったらはいら……あ! スミタカさん、来ていたんですね」

 「あ、うん、ソウダヨー。り、立派なナスだな!」

 「これもスミタカさんのおかげですよ。こんなに大きいと切らないと口に入りませんよー」

 「あ、ああ、そうだな。口だよな」

 「口以外に入れるところなんてないもの、おかしなことを言うわね」

 「ネーラが眩しい……!?」


 ま、そりゃそうだよなと俺はいかがわしい想像をしていたことを反省する。だが――


 「ふっ」

 「……おい、お前今何で笑ったんだ?」

 「いえいえ、何でもありませんよー」

 「確信犯か? まったく顔は可愛いのに、意地の悪いやつだな」

 「か、可愛っ!?」


 俺が頭を掻きながら口を尖らせると、フローレが意外な反応をして『おっ』となる。もしかしたら……と思い、俺はフローレの肩に手を置いて真面目な顔で言う。


 「よく見れば目元はくりっとしているし、口も小さい。小顔だし可愛いよな」

 「にゃ、にゃ……」

 「お前ほど可愛いやつはみたことが無い、うん可愛い! ぐあ!?」

 「にゃぁぁぁぁぁ! スミタカさんのえっち! 獣!」

 「ふっ……勝った……」

 「みゃー!」

 「みゅー!」


 フローレが振ったナスが顎に掠り、俺は膝から崩れ落ちる。だが、顔を真っ赤にして逃げ去るフローレを見て、一矢報いたと倒れながら意識が遠くなる。


 「フローレばっかり! ねえ、スミタカ、私は?」

 「お、おう!? 首をゆするな!? 脳が揺れる……!」

 「ねえ、私はー?」

 「はっはっは、モテるなあスミタカは! 羨ましいぞ!」


 段々と意識が遠ざかっていく中、不満げなネーラと、ベゼルさんの笑い声が耳に入っていた――

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