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九話 赤さん、魔法を教わる

 

 朝、目覚めるとハナさんが鍋でミルクを温めていた。

 アマゾーンで注文していたものが届いたようだ。

 昨日はなかった茶色の箱が、乱暴に開けられ、床に転がっていた。


「おはよう、アカ。ちょっとまってろ」

「おはようございます、ハナさん」


 いよいよ、生まれて初めての食事ができるのか。

 寝起きから嬉しくてニヤニヤが止まらない。


「ミルクは人肌に温めて、適量を三時間おきに与えるのが基本? 面倒くさいな、適当に朝、昼、晩でいいよな?」

「は、はい、大丈夫です。なんとかします」


 本来ならまったく何も食べれなかったのだ。

 それぐらいは我慢しよう。


「あっちぃ。これ人肌になるまで冷めるの待つのか。……まあ、ちょっと熱のある人という設定でいいか」


 いや、よくないよっ! それ、哺乳瓶の中でグツグツいってるじゃないかっ。そんな熱がある人類はたぶん存在しない。


「そ、そうだ。ハナさん、ご飯の前に魔法のことを教えてほしいなぁ」

「ん? まだお腹空いてないのか? 仕方ないな」


 お腹はめっちゃ空いてるが、そのマグマのようなミルクを飲んだら死んでしまう。自然に冷えるまで時間を稼がなくてはいけない。


「私も独学で身に付けたので詳しいことはわからないが、この世界には様々な精霊がいて、魔力を与えると少しだけ力を貸してくれる。それが魔法だ」

「精霊?」


 精霊という単語を復唱すると、頭の中にその情報が流れてきた。


 精霊とは、草木、動物、人、無生物、人工物などすべてのものに宿っている超自然的な存在。

 万物の根源をなしているとされ、この世界では「地・水・火・風」の四大精霊の他に「闇・光」の二つを加えた六大精霊が確認されている。


「精霊の知識が入って来たようだな。まあ、見えない小さなおっさんがそこら中にいると思えばいい。そいつらに魔力という餌を与えて、働いてもらうというわけだ」


 すごく嫌な例えだが、よくわかった。


「じゃあ、持っている魔力が多ければ多いほど、強力な魔法がつかえるんだね」

「そういうことだ。あと魔力の属性によって、精霊が好きなタイプと嫌いなタイプがある。情熱を持った魔力は火の精霊に好かれるが水の精霊には嫌われる、みたいな感じだ」

「同じ魔力量でも、好かれてる属性のほうがいい魔法が使えるということ?」

「そういうことだ。魔力の属性は持って生まれたもので、後から変えることはできないから、まずは自分がどんな精霊に好かれる魔力を持っているかを知る必要がある」


 そう言ってハナさんは亀の甲羅のような、六角形の器を持ってくる。


「ここに手をおけば、魔力が流れる。火の属性なら炎があがり、水の属性なら器に水が溜まる」


 そう言ってハナさんは器に手を添える。

 小さな竜巻のようなものが、器の上に出来上がった。


「これは風属性の特長だ。同じ属性なら風を操り、空を飛ぶ魔法が得意になるぞ」


 おおっ、最初に欲しいと思ってた魔法だ。

 空を飛べたら、赤ちゃんのうちからいろんな所にいけるかもしれない。

 ハナさんと同じ風属性だったらうれしいな。

 そう願いながら器に手を置く。


「あれ?」


 しかし、僕が手を置いた器は、いつまでたっても、まったくなにも起こらなかった。




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