表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/80

八話 赤さん、感謝する

 

「ハナと呼ばれるのは久し振りだな」


 少し嬉しそうにハナさんはそう言った。

 どうやらハナさんと呼ぶのは大丈夫なようだ。


「まあ、ここでは私とアカの二人だけだし、転生前の名前でも大丈夫か。だが、ここ以外ではフラと……いや、生後間もない赤ちゃんがこんなに話すとおかしいから、他では何も話さないほうがいい」


 やはり普通の赤ちゃんは話せないものらしい。


「僕を話せるようにしてくれたのも、別の世界から持ってきた技術なの?」

「いや、それは違う。アレはこっちに転生してから覚えたものだ。身体の一部、声帯だけを成長させて、喋れるようにした。こちらでは魔法と呼ばれているものだ」

「魔法っ! ハナさんは魔法も使えるのっ!?」

「大した魔法は使えない。あくまで補助的なものだけだ。だが、アマゾーンと組み合わせて使えば効果的なものがいくつか存在する」


 ハナさんを尊敬の眼差しで見つめた。

 別世界のものを持ち込めるスキルだけに頼らず、こちらの世界の魔法まで習得している。

 しかも、おっぱいまで大きい。


「僕も魔法、使えるようになるのかな?」

「本当にアカが転生子でないなら、私より使えるようになるはずだ。元々、魔法はこの世界のものだからな」

「本当っ? 嬉しいなっ。空を飛べたり、巨大化出来たりするのかなっ!?」

「そういう魔法もあるが、属性や魔力の容量によって使える魔法は変わってくる。明日見てやるから今日はもう寝ろ」

「わかった! ありがとうっ!」


 絶体絶命の危機から、僕を拾ってくれて魔法まで教えてくれる。

 両親に見捨てられたけど、ハナさんに拾って貰って本当によかった。

 大きくなったら、いつか絶対恩返しをしようと心に誓う。


「……感謝するのはいいが、私はまだアカを疑っている。まずは記憶を失った転生子でないことを証明してみせろ」

「えっ? う、うん、わかった、頑張って証明するよ」


 言葉に出してないのに、感謝していることがハナさんに伝わった。

 最初に出会った時のように思念を読まれたのだろう。

 僕のことを疑って、たまに考えたことを覗いているなら、変なことは考えてはいけない。

 特におっぱい……あ、睨まれた。


 ハナさんはじろりと僕を睨みながら、(わら)(かご)に僕を入れる。

 籠についたハイエナウルフの血は、いつのまにか綺麗に拭き取られていた。

 そして、僕の唯一の装備だったタオルはなくなっていて、代わりにフカフカの毛布をかけてくれる。


「おやすみ、アカ」

「おやすみなさい、ハナさん」


 ハナさんが手のひらサイズの小さな機械のボタンを押すと、天井の灯りが消えて真っ暗になる。

 毛布をぎゅっ、と握るととても暖かく、少し泣きそうになった。

 僕は生まれて初めて安心して眠りについた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ