七十二話 レッド、回想する
ドルタを仲間に出来たのは、いくつもの幸運が重なったからだった。
僕はみんなを守るため、限界まで魔法を使い、魔力が枯渇して意識を失ってしまった。
本来なら、その間にドルタは他の仲間たちによって、ガレア家に引き渡されていただろう。
そうならなかったのは、ハク以外の三人も魔力枯渇により、気を失っていたからだ。
「みんな、最後の魔力を振り絞ってくれたんだね」
「うん、三人とも全然起きる気配がない。一人で運べないから困ってたわ」
ハクは待ってる間に、破れた兵士服から普段着に着替えていた。
おっぱいが見れなくて少しがっかりする。
「レッドはすぐに起きたね。魔力の回復が早いの?」
「ちょっと慣れてるんだよ」
わざと魔力を枯渇させて、鍛えていたとは言わないでおく。
三人の様子を見ると徐々に魔力が回復している。
このまま、死んでしまうことはなさそうだ。
「闇魔法使いはまだ生きている?」
「うん。でも危ないわ。魔力が枯渇している上に、首が折れている。恐らくこのまま目覚めない」
「そうだね。このままじゃ危ないね」
ゴーレムの中で、非常用のミルクを飲んで魔力を回復させる。
同時にドルタに向けて、無詠唱で回復魔法を発動させた。
「助けるの? 他に仲間がいないか聞き出すために?」
「違う。みんなの手前、そう言ったけど、ドルタは単独で行動している」
「どうしてわかるの? いえ、その前にドルタってこいつの名前? 確か名乗ってなかったよね」
「色々、わかるんだ。あとで話すね」
もう、ハクには、『ウィッキーペディア』のことを話してもいいな。
ハクはたぶん、どんなことがあっても僕を裏切らない。
そう、信じていた。
あとは、ドルタが三人よりも早く目覚めれば、交渉が出来る。
ハクさえ、口裏を合わせてくれれば、爆発に巻き込まれて、跡も残さず死んだことにすればいい。
「……ぬ、ぐ、ワシは、生きているのか」
ドルタが最初に目覚めるのは、ある程度予測していた。
やはり、魔力の総量が多いほうが、枯渇した後の回復が早い。
僕が一番に目覚めたのも、一番総魔力が高かったからだ。
「ゴブリンは? まさか、あの数を全て倒したのか? 信じられん」
ドルタはしばらくあたりを見回した後、諦めたようにガックリと肩を落とす。
「ワシをガレア家に引き渡すのか。だったら無駄だよ。何も話すことなどない。どうか、この場でトドメを刺してくれないか」
ゴーレムを操作して、首を横に振る。
「何も話さなくていい。全部わかっている。君と僕は同じなんだ」
そう言って、ゴーレムの胸部をオープンする。
「君はっ! もしかして、ガレア家の転生子かっ!?」
ハクとドルタの前に、僕は本来の姿をさらけ出す。
白と黒。
僕は本当の仲間を見つけようとしていた。




