七話 赤さん、名付けられる
「これがノートパソコンで、このボタンがたくさんあるのが、さっき言っていたキーボードだ。私のスキル、アマゾーンは、これを使って別世界から注文をするんだ」
お姉さんが、ボタンがいっぱいついた二つ折りの薄い機械の説明をしてくれる。
キーボードを軽快な指使いで叩くと、ノートパソコンに精巧な絵が浮かび上がる。
「とりあえず、牛乳と哺乳瓶を買っておくか。くそっ、意外と高いな」
そう言った後、側にあるネズミの形をしたものを動かした後、カチッ、と指で叩いた
「そのネズミみたいなのは?」
「ああ、これはマウスだ。パソコンの付属品で、命令を伝えるための道具だな」
「へーー、便利なネズミさんですね」
「ん、まあ、そうだな。これで注文確定と。明日にはお前の食料が届く」
「え? 明日」
「そうだ。何か問題でも?」
お姉さんから無言の圧力を感じる。
すでにお腹はぺこぺこだが、これは文句を言ってはいけないやつだ。
我慢できないので、今、お姉さんのおっぱいを下さいとか言ったら捨てられるかもしれない。
「大丈夫です。明日まで待ちます」
「そうだな。私が幼い頃は、注文してから到着まで一週間かかることもあった。プライムレベルまで成長した私に感謝するんだな」
「ありがとうございます、お姉さん」
プライムレベルが何かわからないが質問しないで、笑顔でお礼を言った。
お姉さんの機嫌を損なうと、赤さんである僕は、命の危機に晒されてしまう。
「言っておくが、お前の養育費は後で返してもらうぞ。この能力、ただで使えるわけではないんだ。注文するたびに、それに見合った通貨を支払わなければならない」
どうやら、お姉さんの元いた世界のものをなんでも無限に持ってこれるわけではないみたいだ。
「わかりました。動けるようになったら、必ず稼いで返します」
「ふん、まあそれまでお前が生きていたらだけどな。ああ、そうだ。そういえばまだ、名前を聞いてなかったな」
そう言われて僕もお姉さんの名前を聞いてないことに気がついた。
そして、自分の名前がまだないことも思い出す。
「生まれてすぐ捨てられたので、名前はないんです。自分の情報では赤さん(仮)になっています」
「そうか、私もこちらの世界の名前なんか貰わなかった。赤さんか。よし、私が名付けてやろう。お前はアカ・サンだ」
「えええっ、そのままじゃないですかっ、もっといいのないんですかっ?」
流石にこれには抵抗する。
もしかしたら、この適当なのが一生の名前になるかもしれない。
「いいんだよ、仮だよ、仮っ。転生子ぽい名前だと命を狙われるからな。とりあえずお前のことはアカと呼ぶ。わかったな」
「わ、わかりました」
少ししょんぼりしながらうなづく。
独り立ちしたら、絶対改名しよう。
「そういえば、お姉さんの名前はなんて言うんですか?」
「ああ、転生してくる前の世界では、私は花という名前だったからな。こちらではフラ・ワーと名乗っている」
お姉さん、いやハナさんのネーミングセンスが壊滅的だったことが判明する。
「これからよろしくお願いします、ハナさん」
僕はあえて、お姉さんをハナさんと呼ぶことにした。