六十八話 クーピーズ、集結する
最初に目に入ったのは大量のゴブリンではなく、おっぱいだった。
ゴブリンたちにやられたのか。
ハクの白い衣服がビリビリに引き裂かれ、小ぶりなおっぱいが露出していた。
大きくはない。
大きくはないのだが、実に綺麗なお椀型だった。
なんだか上手く言えないが、ハナさんの大きなおっぱいとは違った魅力に、僕はしばらく釘付けになっていた。
その視線に気がついたハクが、片手でおっぱいを隠し、恥ずかしそうにしながら、きっ、とこちらを睨んだところで、ようやく目線を逸らす。
「状況を確認する。ゴブリンを操っている黒幕はまだ見つかっていないか?」
「こいづだ、リーダー。でも、倒してもゴブリンは消えねえだ」
ベンが足元に倒れている黒髪の小さな男を指差す。
まだ息はあるようだが、ほとんど動いていない。
『ウィッキーペディア』で男の情報を引き出した。
名前 ドルタ・ポルカ
種族 人間
年齢 45歳
出身地 リング王国
一人称 ワシ
髪色 黒色
職業 復讐者
装備 ゴブリンの皮
アイテム ゴブリン変装セット
ガレア家への憎しみ 100%
スキル ゴブリン召喚
体力 2/120
魔力 0/1220
魔法属性 闇属性
魔法レベル
火 2
水 2
風 2
地 3
光 0
闇 85
なるほど、完全に闇魔法に特化している。
魔力がゼロになっていることから、最後の力を振り絞り、限界までゴブリンを召喚したようだ。
しかし、召喚者であるドルタが気絶しても、消えないとはかなり厄介な能力だ。
恐らく、トドメを刺しても、同じことだろう。
「もう、みんな魔力がほとんど残っていない。どうする、レッドっ」
おっぱいを隠しながらハクが叫ぶ。
こんな時なのに、おっぱいが気になって仕方がない。
ゴブリンどもは、ジリジリとこちらを取り囲み、今にも襲ってきそうだった。
「おっぱ…… いや、ちがう。全員、こっちに来て固まろうっ、ベンは倒れている黒幕を連れてきてくれ」
「いま、おっぱいて言わなかった?」
「言ってないっ。ギリギリ踏みとどまったっ」
ゴブリンどもが包囲する中、ベンはドルタを抱え、四人がこちらにやってくる。
「絶対絶命じゃないっ。どうするのよっ」
泥まみれのシャラは、肩で息をしていた。
ここに来るまでに、ベンと二人で頑張っていたんだろう。誰も死ななかったことが奇跡に近い。
「ゴブリンは黒幕に命令されなくても俺達を襲ってくる。全部倒すしか、生き残る道はない」
切り札である核魔法を使えば、切り抜けれるかもしれないが、みんなにバレるわけにはいかない。
最悪、ハク以外の三人を自らの手で始末しなければ、ならなくなる。
「……三人に最後の魔力を振り絞ってもらう」
都合のいいことに、ベン、シャラ、ポールの三人は地魔法と水魔法と火魔法が得意属性だ。
この三人の魔法を合成する。
それが残された最後の手段だった。