六十三話 クーピーズ、開戦する
ゴブリン。
緑色の肌をした怪物。
背丈は十歳くらいの子供ほどで、ギョロリとした大きな目と、肥大化した鼻が特徴的で、醜い顔をしている。
知能はそれほど高くはないが、武器を持ったり、簡単な罠を仕掛けたりはできるようだ。
繁殖能力が高く、同種族だけではなく、人間の女性をさらって孕ませたりもする。
一匹、一匹の戦闘能力は大したことはないが、常に10匹ほどの群れを作り行動することが多い。
『ウィッキーペディア』で調べたゴブリンの情報はざっ、とこんなものだった。
やはり、50匹以上の大群で行動するゴブリンは、想定外だ。
並のゴブリンでは、そこまで大きな群れを統率できない。
かなり、特殊なボスがいるか、もしくは、人為的なものが関わっている可能性が高いだろう。
「綺麗な円をえがくように囲まれている。やはり、普通のゴブリンとは違うようだ」
高度な魔法で操られているのか。
だが、近くにはゴブリンの気配しかない。
「まずはここにいるヤツラを一匹残らず殲滅する。ポール、俺達が囲まれている、さらに外側を炎で囲えるか?」
「で、できるけどよ。オレ達の逃げ道は完全になくなるぜ」
「俺達が逃げることになると思うか?」
ゴーレムの顔の表情を笑うに切り替える。
それを見てポールも、引きつったような笑みを浮かべた。
「信じてるぞ、リーダー」
「ああ、大丈夫だ」
ポールが詠唱をすると同時に、ハクに無詠唱で加速魔法をかける。
さらに、地魔法と水魔法の合成魔法、底無し沼で周りの地面を泥沼に変化させた。
「炎よ、オレの力となり、滾れ、唸れ、燃えさかれっ!」
僕達を囲んでいたゴブリンの背後から、一斉に炎の柱が燃えあがる。
「ギィギィギィギィギィッ!!」
人間には、発せられない不気味な雄叫びを挙げ、ゴブリンの大群が雪崩れのように押し寄せてきた。
「ハクっ!」
「わかってる」
周りの地面が泥沼になっていることを察したハクが、迫るゴブリンの頭を踏み台にしながら、ジグザグに飛んでいく。
わずか一呼吸の間に、10匹ちかくのゴブリンの首が反対方向に曲がっていた。
「ギィ、ギャッ!?」
残りのゴブリン達も泥沼にはまり、足元を取られている。
「ふんっ!」
巨大な斧を振り回し、近くのゴブリンの首をまとめて、跳ね飛ばす。
「わ、笑いながらやるのかよっ」
ポールにそう言われて、ゴーレムの表情を笑ったままにしていたことを思い出す。
慌てて無表情に切り替えた。
「レッド、コイツら、やっぱりおかしいっ!」
ハクに言われるまでもなく、異変には気付いていた。
すでに半分以上のゴブリンを倒したのに、まるで怯む様子がない。
目を血走らせながら、ひたすらこちらに向かってくる。
やはり、操っている奴がいるのかっ。
透明になった門番のカートを見つけた時の、地魔法と風魔法を合成させた探知魔法を発動させる。
しかし、魔法が届く範囲には、ゴブリン以外の反応がない。
「おいっ、あのゴブリンっ! 仲間をっ……!!」
ポールの声に振り向くと、一匹のゴブリンが倒れたゴブリンに噛みついていた。
「……食べているのか、ゴブリンがゴブリンをっ!」
仲間を喰らったゴブリンが倍くらいに膨らんでいた。
子供の大きさくらいだったゴブリンが、大人ぐらいの大きさになっている。
さらに、手当たり次第に倒れたゴブリンを食べ始め、どんどんと巨大化していく。
もはやそれはゴブリンと呼べるものではなくなっていた。
「ギィギィガァアアアアアアッ!!」
十メートル級のジャイアントゴブリンが、咆哮のような産声をあげた。




