四十九話 レッド、握りしめる
長かった試合が終わった後、二回戦は急ピッチで進んでいった。
待ち時間で、焦らされた候補者達が初手から全開で戦ったからだろう。
先程の半分ほどの時間で、残りの六試合はすべて決着がついた。
三十人弱の候補者はこの時点で、わずか七名となる。
「三回戦、第一試合は、不戦勝によりレッドの勝利っ」
当然のことながら、僕はそのままベスト4へと勝ち進む。
後、二人。
対戦相手はもうほとんど決まったようなものだった。
「つづけて、第二試合、ロンドとジャバオ、こちらへ」
この試合の勝者(ほぼ100%の確率でロンド)が次の相手になる。
最初、ロンドは候補者達の力を見れば、自ら敗退すると予想していた。
しかし、どうやらその様子はないようだ。
優勝すれば役職を貰えるというのは、実は嘘で、最初からロンドが優勝するように決まっていたのかもしれない。
ロンドに勝つことは難しそうなので、ポールのように毒を盛ったり、試合を引き分けにしようとも計画したが、ロンドにはまったく隙が見当たらなかった。
昼休憩の時も、何も食べなかったし、飲み物も自分が用意したものしか口にしない。
対戦相手とも力の差があり過ぎて、下手な小細工は仕掛けられない。
候補者でなく、本当はガレア兵士隊長のロンドには、隠している力を一番見せたくない。
ハクとなら試験官やロンドにバレないように、全力を出せる手段をいくつか思い付くが、対ロンド戦ではそれも不可能だ。
次の戦いが、この試験における最大の難関となるのは、間違いなかった。
ゴーレムの中で光魔法を使う。
内部が照らされて、胸部に搭載されているアイテムの数々が浮かび上がる。
そのうちの一つ。
この世界にはない、『回転式拳銃』と呼ばれる武器を手に取った。
この段階では、まだ使いたくはなかったが、もしかしたら使うことになるかもしれない。
ほとんどの武器を持って家を出たハナさんが、ただ一つだけ残していった形見ともいえる回転式拳銃。
弾は装填されている六発のみ。
僕には、アマゾーンで注文することはできない為、撃ち尽くしたら補充は出来ない。
しかし、回転式拳銃で撃ち出される弾丸はどんな魔法でも防げない。
誰にも気づかれることなく、使うことが出来れば、最強の切り札となるが、バレてしまったら、転生子として疑われ、すべての計画が狂うことになる。
大丈夫、きっとハナさんが僕を守ってくれる。
使える弾丸は、三発だけだ。
後の三発は両親と祖父に撃ち込まなければならない。
見ていてね、ハナさん。
ハナさんが頭を撫でてくれた時の、とてもあったかい手を思い出しながら、ぎゅっ、と回転式拳銃を握りしめる。
そこからは、硬く冷たい感触しか帰ってこなかった。




