三十九話 ロンド、暗躍する
「それではこれよりガレア隊兵士の入団試験を始める」
広場の中央に集まったのは三十人弱の兵士候補生達だった。
転生子事件で失った兵士の数を元に戻す為、今、ガレアの街では毎月のように入団試験が行われている。
「試験は、集まった候補生同士の模擬戦闘を見ることになる。トーナメント方式で戦ってもらうが、負けたからといって不採用となるわけではない。実力があるとわかれば、一回戦で負けても採用する」
まあ、あくまで建前だ。
一回戦負けの兵士の実力なんてなかなかわからない。
「そして、最後まで勝ち残ったものには、特賞として、入団初日から役職が与えられる。出世コース間違いなしだ。全員、優勝を目指して頑張ってくれ」
丸暗記したセリフを言い終えた試験官が、ボクの姿を確認して軽く会釈した。
なんて無能なんだろう。
ボクが候補生の中に潜入しているのがバレたら意味がないことがわからないのか?
兵士の質がかなり落ちていることを実感する。
数だけ増やしても意味がないことをもっと強くいうべきだった。
上はとりあえず、兵士を増やし、訓練させればいいと思っている。
ボクの考えとは根本的に違う。
使えない奴は、いくら鍛えても使えない。
それに、力のある者なら、誰でも採用していいというものでもない。
素性の知らない者を兵士として雇えば、ソイツが他の国の間者ということもありえるのだ。
さらには、あの転生子事件の仲間という可能性も捨てきれない。
その為にボクは候補生の中に紛れ込み、様々な情報を聞き出していた。
「……三十人弱。5回勝てば優勝か」
入り口の門で出会ったレッドがそう呟いていた。
田舎から出てきたばかりのおっさんは、どうやら自分の実力がわかっていないようだ。
ボクの見立てでは、この中でも最下位クラスの力しかない。
一回戦を勝つことも出来ないだろう。
それよりも注目すべき者が他に何人かいる。
「頑張ってね、レッド」
「ありがとう、ロンド」
軽く肩を叩いて、ボクは他の候補生のところに行く。
戦闘する前から、能力の高さがわかるのは二人。
地魔法が得意属性のベンと水魔法が得意属性のシャラだ。
二人とも、ボクと同じように頭髪が属性色に染まっている。
地魔法のベンは、茶色。
水魔法のシャラは、青色。
魔法だけで戦闘力が決まるわけではないが、実践で使えるレベルの魔法なら、下手な剣士なんかより格段に強い。
「それでは第一試合を始める。レッドとベン、こっちに来てくれ」
いきなり、ベンからか。
相手がレッドというのが物足りない。
あまりに弱いとベンが実力を発揮する前に終わってしまう。
公園の中央に設置された簡易闘技場に二人が向かう。
緊張しているのか、レッドが何もないところでつまずいて、転びそうになっていた。
まあ、二回戦の相手に期待するか。
レッドがベンに勝つ確率など、0パーセントだとボクは思っていた。




