表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生子と間違えられ、捨てられた赤さん、知識スキル『ウィッキーペディア』で成り上がる  作者: アキライズン
プロローグ アカとハナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/80

三十八話 プロローグのエピローグ

 

 掘りの深い男だった。

 まるで、銅像のような顔だと思ってしまった。

 年は三十歳くらいだろうか。

 真紅の髪はボサボサで、身長は二メートル近い。

 獣の皮で作られた服は、しばらく洗ってないのか、異臭を放っている。


「君も試験を受けにきたのか?」


 話しかけると、男は黙ってうなづいた。

 表情がほとんど変わらない。


「ボクもそうだ。ガレアの街は、あの事件以来、ずっと兵士を募集しているからね。君も今なら簡単に入団試験に受かると思って来たんだろ?」

「……まあ、そんなところだ」


 初めて聞いた男の声は、かなり低く、くぐもったような渋い声だった。


「じゃあ、一応ライバルだね。ボクの名前はロンド。よろしくな、えっと……」

「……レッドだ。よろしく、ロンド」


 ボクの方を見ずにレッドはそう言った。

 無愛想な男だった。

 しかし、話しかけないわけにはいかない。

 ボクの本当の目的は、入団試験に受かることではないのだから。


「しかし、あれだね。大きな事件があったから、なかなか街に入る検査に時間がかかっているね。ボク達が中に入る頃には日が暮れてるんじゃないかな?」

「……そうか?」

「いや、冗談だよ、レッド、そこまでかからないよ。突っ込んでくれよ」

「……ああ、そうか。悪かったな」


 まったく会話が弾まない。

 なかなか情報を引き出せないな。


「その髪、かなり赤いけどレッドは火属性なのか?」

「いや、違う。俺は風属性だ」

「えっ、そうなの? ボクも風属性なんだ。ほら、見てよ。髪の毛、見事な緑色だろ。風魔法を極めていくと、髪色が緑に変わるんだよ。知ってたかい?」

「いや、知らなかった。俺は、そんなに魔法が得意ではないんだ」


 確かに見た目は、戦士にしか見えない。

 背中に巨大な斧も背負っている。

 得意属性により、髪の色が変わっていくのは、魔法を修練するものなら誰でも知っていることだ。

 恐らく、レッドはあまり魔法が使えないか、補助的なものしか使用できないのだろう。


「そうか、髪が赤いってことは、北の方の出身かな?」

「ああ、バザルビートからやってきた」

「へぇ、あそこの名物、前に食べたな。あの肉団子を串に刺してあるやつ」

「いや、串には刺してない。バザルビートの名物は肉団子を揚げて食べる、ボンボンだ」

「あーー、そうだ、それそれ。ありがとう、思い出したよ」


 どうやら、本当にただの田舎者のようだ。

 魔法も大したことなさそうだし、もう警戒する必要もないだろう。

 一応、最後に身体能力をチェックしておくか。


「そういえば、あそこでお土産を買ったんだけど、あれ、どこいったかな、おっと」


 懐からわざと銅貨を落としてみた。

 レッドが咄嗟(とっさ)にどう動くかを、じっくりと観察する。


 お粗末(そまつ)な動きだった。

 鈍いなんてものじゃない。

 地魔法が苦手な魔法使いが作ったゴーレムでも、もう少しマシな動きをするのではないだろうか。


「……これ」

「ああ、ありがとう。試験お互い頑張ろう」


 レッドは恐らく試験に受かることはないだろう。

 間違って受かったとしても、ボクの部隊には配属しないでほしい。

 足手まとい以外の何者でもない。



 後にボクは後悔することになる。

 最も警戒すべき人物のマークを外してしまったことを。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ