三十七話 弟くん、心配する
大爆発と共に夢から覚めた。
思わず、自分の顔や身体を触ってしまう。
無意識に、どこも吹っ飛んでないことを確認していた。
それほど、リアルな夢だったのだ。
「あら、まだ一ヶ月しかたってませんよ」
真っ白い何もない部屋で、素っ裸の女がニコニコ笑いながら話してくる。
一年後に転生するまで、寝て過ごそうとしたことを思い出す。
「この夢、ターゲットである兄の夢だけ見るんじゃないんスか?」
「それだけじゃつまらないでしょう。関連する人物の夢も観れるように構成しました。監督、脚本、演出、すべて私です」
実に楽しそうにそういうが、本心はまったく違う。
女の裏には、暗いドロドロとした闇が広がっているのがわかる。
「あら、失礼なことを考えていますね。本当に私は楽しんでいますよ」
楽しみ方にも、色々あるというわけか。
これ以上はこの女について考えるのはやめておこう。
それよりもだ。
「ハナさんは、どうして正面から戦ったんスか? あれだけの武器が買えるなら、俺ならもっとうまくやれる」
「ほほう。例えばどんな方法で?」
「まず、銃器なんて使用しない。一般人を気にしないなら、化学兵器で街ごと毒殺する。ガレア家や兵士だけを吹き飛ばすにしても、自爆なんてせずにドローンに爆弾を積んで、安全圏から爆撃する」
簡単に考えただけでも、10個近くの作戦が瞬時に浮かぶ。
俺がハナさんと同じ能力を持っていたら、すぐにこの世界を支配できるだろう。
「あー、残念ながらどれも却下ですね。そういったアイテムは買えないようにうまく調整しているんですよ。バランスは大事ですからね」
「アイテム? 調整? バランス? まるでゲームみたいな言い方っスね」
その問いに女は答えなかった。
女は目を細めて静かに笑った。
その不気味な笑みは、はじめて、俺の前で見せた、本当の笑みだった。
「まあ、どのみち彼女には、そんなに選択は残されてませんでした。私からの指令を無視してましたし、最初から死ぬつもりだったのではないかしら」
「ハナさんにも俺と同じような指令を出していたんスか?」
「ええ、そうですね。内容は言えませんが、確かに同じような指令でした」
もしかしたら、俺とまったく同じ指令だったのか。
まあ、どちらにせよ、ハナさんはもういないし、考えても仕方がない。
「アカは、俺の兄は、ハナさんを失って大丈夫なんスか?」
まだ俺が生まれるまで十一ヶ月も残っている。
今の兄は、すぐにでもガレアの街に乗り込んでいきそうな勢いだ。
そんなことをすれば、すぐに返り討ちにあって、ハナさんの想いも台無しになってしまう。
「大丈夫ですよ。ああ見えても、ちゃんと主人公していますから」
そう言われて、ほっ、としている自分に動揺する。
俺が他人に感情移入しているのか?
いや、違う。
殺すはずのターゲットを失うことを気にしているだけだ。
「もう、寝ます。次はなるべく起きないようにします」
「おやすみなさい。いい夢を」
眠りにつくと、やはりすぐに夢を見た。
アカが部屋で一人泣いている。
頑張れ、頑張れ、頑張れ、アカ。
俺は、夢の中でずっとアカを応援していた。




