十五話 赤さん、おもらしする
ハナさんが夜御飯の準備をしている。
再び灼熱のミルクが出来上がろうとしている。
その前に僕は必死に水魔法の練習をしていた。
熱いミルクを急激に冷やすには、氷を作成すればいいと思い、念じてみる。
しかし、手からちょっと冷たい水が出るくらいで、なかなか氷にはならない。
レベルが低いから、まだ氷にならないのだろうか。
だとしたら、また自然に冷めるまでミルクを飲むことができないことになる。
「よし、出来たぞ。うん、人肌のぬくもりを感じる」
そう言いながら、ハナさんはマグマ人間の人肌くらいのミルクを風魔法で運んできた。明らかに素手で持つことを諦めている。
「早く飲んで、早く寝ろよ、明日は色々と…… って、アカ、お前、お漏らししたのかっ!」
水魔法を練習していたせいで、寝ていた藁の籠がびしゃびしゃに濡れていた。
それをハナさんは、僕がおしっこをしたと勘違いしたらしい。
「ああ、しまった。オムツ買うの忘れてた。てか話せるんだから、トイレの時はちゃんと言えよ」
「違う、ハナさん、これ水だよっ。水魔法の練習をしてたんだ」
「ん? 本当だ、臭わないな」
ハナさんが丸出しの僕の股間をくんくん匂う。
ちょっと恥ずかしい。
そして、こともあろうか、この時、この瞬間、僕の尿意が突然限界を突破した。
ハナさんの顔に向かって、放たれる大量の黄金水。
殺される。
これがハナさんにかかったら、僕は確実に殺される。
それは全力の願いだった。
水の精霊に向かって、全身全霊で祈りを捧げる。
ハナさんにかかるはずの黄金水は、その寸前で動きを止めていた。
カキーン、とすべてが固まり、黄金の氷が出来上がる。
「……できた。できたよっ、ハナさんっ、僕、おしっこ、凍らせたよっ!」
「凍らせたよ、じゃねえよっ、馬鹿野郎っ、おしっこかかってたら、絞め殺してたぞっ!」
やはり、かかっていたら殺されていた。
想いに応えてくれた水の精霊に感謝を捧げる。
前回、自分の情報を見た時に、排尿率が70パーセントだったことを忘れていた。
これからは小まめにチェックして、気をつけなければならない。
名前 アカ・サン(仮)
種族 人間
年齢 0歳と一日と三時間
職業 転生子の養子
装備 ふかふかの毛布
アイテム 藁の籠
排尿率 スッキリ爽快
スキル くぁwせdrftgyふじこlp
体力 7/10
魔力 5/200
魔法属性 無属性
魔法レベル
火 1
水 4
風 4
地 2
光 3
闇 1
水魔法のレベルが一気に4まで上がっていた。
ただ、再び魔力が尽きかけている。
随分、無茶をしてしまったようだ。
0になると死にかけるが、また魔力の総量が倍になるのだろうか。
リスクが高いので試すわけにもいかず、ミルクを冷やすことは諦める。
自然に使っていた光魔法も停止させるため、見えなくても大丈夫と願うと、目に付いていたレンズが消えて、まわりの視界がボヤけてほとんど見えなくなった。
「おい、アカ、このおしっこ氷、自分で処理できるか? て、あれ、おい、寝てるのか。これ、私が片付けるのかよっ」
視界が見えなくなったとたんに急激な睡魔に襲われる。
魔力が枯渇しそうなことにも関係しているのか。
ハナさんの声が遠くなっていき、なんだか、それが子守唄のように心地よい。
起きたらミルクも冷めているだろう。
「むにゃ、ありがとう、ハナさん」
なんとか最後にそう言って夢の世界に入っていく。
「……ちっ、仕方ないな」
愚痴を言うハナさんの声が少し優しくて、僕はとても幸せな気分になった。
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