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歪んだ世界に生きる歪な私たち  作者: 鮫りょー
1/2

※一部差別的な要素がありますが本作品は差別を助長することではありません。ですがやはり不快になられた方がございましたら申し訳ありません。

 『20XX年、世界対戦で用いられた蔓延性奇怪生物兵器(通称IV)の影響によって人間の変異種が誕生した。

変異種とは何らかの欠陥を持って生まれたヒトであってヒトでない生物のことである。

今日では世界総人口の約3割がそれにあたり怯えながら息を潜めながら暮らしている。

変異の研究は行われているものの効果的な治療法は未だ見つかっておらず、また確認された事例はいずれも先天的なもので変異種の親から生まれた個体は高確率で変異種になることから更なる研究が急がれる。

変異種は人間の数倍の余命と頑強な身体を持っている。

中には特殊能力『(バグ)』を持つ者も存在することが確認されている。』


 週に一回の変異種についての授業が5分後のチャイムで終わる。

今日こそは彼女と一緒にお弁当を食べよう、そう固く決意し神経を研ぎ澄ます。

彼女、月宮天詞は4限の授業が終わるといつも消える。消えたようになんてもんじゃない、消えるのだ。

以前気になって授業中からずっと彼女を逃がさないように凝視していたことがあった。

授業終了の挨拶のときでさえ彼女を見ていたのだが先生に叱られ気を抜いたすきに彼女は消えていた。

クラスメイトたちも最初の方は彼女を捕まえようと試みていたものもことごとく失敗し諦めてしまい今でも果敢にチャレンジしているのは私一人になった。

キーンコーンカーンコーンとザ・学校という感じのチャイムが鳴り先生が終了の合図を学級委員の佐伯に送る。

彼がはっきりと「起立、礼」を言い終わらないうちに私は彼女のもとへ向かった。

授業後彼女が教室をどんなに早く出ようともフライングしてしまえばこちらのものだ。

この作戦は前々から考えていたが実行しようとは思っていなかった。

なんとなくルールに反していると思ったからだ。

もちろん社会的にもダメなのだがそうではなく彼女との対決のルールにだ。

授業が終わって本当にすぐ、彼女はまだ消えずに彼女の席の近くにいた。

「月宮さん!お昼一緒に食べよう!!」

ついに、ついにこの時がきた。

この長い戦いに勝ったのだ。

彼女を追い始めてはや5か月が経った今日、ようやく彼女を捕まえた。

周囲のかつて諦めていったクラスメイトたちが私に祝福を贈っている。

今日はクラス全員で輪になって談笑しながら食べようとみんなで話していると月宮さんが複雑そうな笑顔を浮かべていた。

どうしたのかと問いかけると彼女は少し迷いながらも「何で?」と聞いてきた。

彼女の発言で教室の温度が10度は下がっただろう。

今まで賑やかに騒いでいたクラスメイトたちも固まってしまった。

気まずい雰囲気の中、学級委員を務めている佐伯が声を発した。

「月宮はこいつらと一緒に昼メシ食いたくないってこと?」

佐伯の発言で更に教室の温度が10度下がった。

彼は月宮さんの次に成績が良く頭も良いはずなのだが何故今ここでそれを発揮しない。

テストのときではなくここでその素晴らしい頭を活かして欲しい、切実に。

「えーっと、月宮さん、嫌……?」

少し声を高くして控えめに聞く。

もちろん上目遣いも忘れずに。

自慢になるがこれで断られたことは1度もない私の超必殺技だ。

「……食事は静かにとりたいのですみません」

頼むから空気を読んでくれ!

なんでクラス、いや学年トップ2が両方とも空気読めないんだよ。

月宮さんに断られたのと必殺技が通用しなかったことのダフルコンボにやられ肩を落としていると優しいクラスメイトたちが慰めてくれた。

私がみんなの優しさに浸っているうちにいつの間にか彼女はいなくなっていた。

ついでに佐伯も。





「珍しく遅かったですね。何かありました?」

図書室の奥にある地下書庫へと続く階段に座っている青年が尋ねる。

病的な白さすら感じさせるこの人は巫家の当主巫福治の息子、従兄の巫福光だ。

巫家とその分家は変異種の狩りを生業としている。

変異種を狩るためには正義を振りかざす為の力『(パッチ)』が必要だ。

それは変異種の『(バグ)』と同じで先天的な要素が強い。

巫は月宮、和倉、文月、赤嶺などの分家をもつ由緒正しい家柄で分家の中から『(パッチ)』が一番強い者を巫家当主にする。

歴代の当主の中でも5本の指に入ると言われている福治だが彼の息子は私と同じく『(パッチ)』が全くなかった。

彼はそのせいで家の中でろくな扱いを受けていなかった。

「特に何も」

嘘をついたところで聡い彼には無意味なのだがそれでも私はいつも嘘をつく。

彼があの家で生きていくために自分の情報はどんな相手であろうと隠せと教えてくれた。

その教えを守っていたらいつの間にか嘘をつくのが癖になっていたのだから仕方がないと思う。

「そうですか」

彼は笑顔でそう言うとにこにこしながら昼食の準備を始めたので私も隣に座って用意をした。

彼が本当に笑顔だったのか、そもそも笑顔とはどういった表情なのか良くわからないのがもどかしく感じた。

始めての作品で拙い部分もありますが(むしろ拙い部分しかない)目を通していただきありがとうございます。スローペースでも完成させ、満足のいく作品にできたらと思っています。「こんな愚作でも読んでやろうじゃねーか」というお方がおりましたらよろしくお願いします。

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