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神様がいない異世界新生活  作者: 出佐由乃
ユズ市の道具屋 編
6/42

6 異世界に来れ…た…のか?

 そうして程なくして意識を失ったらしい私は、気づいたら林の中の小さな池の(ふち)に倒れてたってわけ。

 起き上がって周囲を見渡して、第一話(冒頭)に至るってわけ。

 で、滑って倒れてふりかえって、ロープが切れてることに気づいてわけ。

 ……はぁ。


 これは非常事態だ。

 ロープがあるからこそ、安心して此方(こちら)に来たのだ。ロープが切れたということは、簡単には元の世界に帰れない。

 帰れないってことは、帰れないってことは……

 サーッと血の気が引いて、頭が急激に冷える感覚を覚える。

 色々嫌な予想が頭を駆け巡る。

 この世界に意思疎通のできる生命体がいないかもしれない。危険な魔物で溢れた世界かもしれない。意思疎通できる生物がいても、私のことを敵として扱うかもしれない。最悪殺されるかも。一番嫌なのは奴隷とか……

 頬に水滴が溜まっている。……マスク(ゴーグル)つけっぱなしだった。

 レギュレーターはとっくに外れている。空気が無いのだったらすでに影響が出てるはずだから、空気はあるっぽい。マスクも外しても大丈夫だろう。

 私はマスクを外し、もう一度辺りを見渡した。


「森……というよりはやっぱり林ね。日が地面まで差し込んでるし。この木はおそらく照葉樹に分類される種類。シイとかカシとか……予備校で覚えさせられたなぁ。語呂合わせがあったけど、なんだっけ?」


 針葉樹林と照葉樹林と夏緑樹林の語呂合わせがあったはずだけど、全く思い出せない。

 やっぱり予備校の知識なんて受験でしか役に……いや、今いちおう役に立ったか。


「土の色は、日本と大差ないわねぇ。……ってか、ここ、本当に異世界?気温も向こうと大差ないんだけど。その上、植生も同じ感じだし。ただ地底湖が近くの池と繋がっていただけってことは……」


 ……ありえる。ありエール。

 けっこうそういう噂って多いよね。実はこの洞窟はどこどこの湖と繋がっているんです、みたいな。

 元々、そんなに大きくない地底湖に、この小さな池だ。可能性はなくはない。


「いやでも、そしたら行方不明者が見つかってないとおかしいか?私が運良くここにたどり着けただけ?」


 ふと自分の腕を見る。必要ないかなって思ったけど、買っておいたダイビングウォッチがある。デジタル表記で8:21と表示しているのが見える。

 潜ってから4時間以上。タンクの空気がなくなる時間をとっくに過ぎている。

 約3時間もここに倒れていたのか。危険生物がいればすでにあの世だった。

 ……実はここはあの世なのでは?

 なんかそんな感じの怪談話、なかったっけ?

 私、怖い話嫌いだからすぐ耳塞いじゃって、まともに聞いたことないんだよね。

 テレビで咲が見てても、私は音が聞こえないところに逃げてた。


「……そうだ、咲!ロープが切れてたら流石に気づくはず。あの子は勘が鋭いから、危ないとわかってたら私の後を追うなんてことはしないはず。……いや、勘が鋭いからこっちに来れると感づいて追ってくるかも……」


 どちらにせよ、私に異常事態が起きたことにはもう気づいているはず。気づいたところで、な気もするけど。

 とりあえず私は、私の現状の把握を優先しなくては。


 まずは持ち物。

 今、身に着けているのはダイビングウォッチ、タンク、フィン。それと、タンクに括り付けておいた耐水ケースに入ったスマホ……スマホ!?

 そうだった!スマホ持ってきたんだった!

 異世界なら必要ないかなって思ったけど、何故か持ち込んだんだった!

 スマホが手元にないと不安になるよね。……なるよね?

 私は急いでタンクを下ろし、耐水ケースからスマホを取り出す。

 電源は……ついた!


「た、助かったぁ。これで助けを呼べる……」


 スマホに映る『圏外』の二文字…………


「本当に来れた、異世界……」


 いや、何回言うねん!


前回の後書きの通りですよ!

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