11 地獄の道程?
ごめんなさい、地獄は大袈裟だったかも。
私は向かっている町の妄想を膨らませながら火憐の後を歩いていたんだけど、ここが林の中ということを失念してました。盛大に滑らせました、足を。
落ち葉が積み重なっていて元々滑りやすい上に、少し傾斜になっているもんだからバランスを崩しやすいのなんの。足元に集中してないと絶対に転ぶ。
でも足元ばかり見てると低い枝が顔面に直撃。
火憐は慣れているのか、ひょいひょいと獣道を進んでいく。
「ま、待って、火憐」
「なんじゃ、速いか?」
「う、うん。ちょっと、キツイ、かも」
「むう。これでは暗くなる前に町に辿り着けんの」
「うぅ、面目ない……」
「仕方ないのじゃ。その杖のようなもの、わしが持ってやるから、先を急ぐのじゃ」
「ええ!?こ、これは杖代わりだから、無いと転ぶかも……」
「あっても転んでおるんじゃから無くても一緒じゃ。むしろ両手を空けておいた方が歩きやすいと思うのじゃが」
「そ、そうかなぁ……」
この杖代わりのピッケル。今歩いている場所が軽い下り坂になっているから、地面に少しばかり届かない。確かに持ってる意味はないのだが、これを持っていることで安心感が違う。私、手に何か持っていないと落ち着かないんだよね。
「そうか、わかったのじゃ!」
「うん?」
「えみ、そこに立て」
「えっと……何するの?」
「まあいいから。そこに立つんじゃ」
私はしぶしぶ火憐の前で気を付けの姿勢をとる。
火憐は足元の鎖を伸ばし始めた。そういえば歩いているときは金属球が見当たらなかった。てっきり引き摺って歩くのかと思っていたのに。
「その球、どこに隠してたの?」
「ん?ああ、これか?魔法が使えると言ったじゃろ?中に隠しておったのじゃ」
そう言ってスカートの端を掴んだ。
浮かしてたってこと?
「そんなことより、このままだと暗くなる前に町に着けんから、えみの身体を浮かして運ぼうと思うのじゃ」
「え?そんなことできんの?」
「もちろんじゃ!わしは地属性魔法も使えるんじゃぞ。これくらい赤子の手をひねるようなものじゃ」
「……いまいち魔法の難度の基準がわからないんだけど」
「それはまた今度、じっくり教えてやるのじゃ。ではえみ、動くのじゃないぞ」
浮遊かぁ。身一つで宙に浮くのは元の世界じゃ難しいだろう。
この世界ではそれが可能なのだ。私はワクワクしながら火憐のことを見つめていた。
火憐は巻き取った鎖を私の周りにグルグル巻きつけて、最後に金属球を鎖に絡めて固定した。
「ちょっと」
「なんじゃ?」
「なんで私は鎖を身体に巻きつけられてるの?」
「歩きながら対象に触れずにそれを宙に浮かべるのはとても難しいのじゃ。じゃから、この鎖を通してえみの身体に触れることで、魔法が楽になるのじゃ。それに鎖があれば引っ張っていくことができるし、制御を間違えてえみが飛んで行ってしまうこともないのじゃ」
「そうなんだぁ」
よくわからないけど、火憐が言うのだから必要なことなのだろう。素人の私が出る幕ではないね。
「ではいくぞ」
「よし、来い!」
「静かにしていてほしいのじゃ」
「よし、来い……」
「……」
火憐が私の方を向いてゆっくり目を閉じた。なんとなく私も目をつぶる。
だんだん鎖の重さが感じられなくなってきた。それから私の髪の毛が下敷きの静電気で持ち上がるみたいに、ふわっと浮いた気がした。
足の裏が地面をとらえられなくなった。おお、なんだか浮いてる気がする。
「終わったのじゅ」
「うん?お、おおお!?浮いてる!」
「そりゃ、浮かせたのじゃから浮くじゃろうて」
私は完全に浮いていた。
いや、よく空気読めないとか言われるけど、今回はしっかり浮いていた。物理的に。
いざ浮遊してみると、思ったよりもこの現象にエネルギーを要していないような気がする。
風を吹かして浮かしているのではなく、見えない台のようなものに乗っている感じ。なんとも不思議だ。
高さは50センチくらい上がったのだろうか。火憐の顔の高さに私の膝があるくらいだ。
「すごいね」
「それほどでも、なのじゃ」
ちょっと照れてるのが可愛いなぁ。咲はそっけないから、こういう妹が欲しかったなぁ。
そういえば、咲はどうしてるかな。私がこっちでおしゃべりに興じてる間、切れたロープに呆然として蒼褪めてそうだなぁ。今頃、今後の方針を考えてるかな。
「では行くのじゃ!」
「よろしくぅ!」
……ここからが地獄の道のりだとは知る由もなかった。ってもういいわ!
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