「子供ですか?」
済まない、書きたくなった。
「ジャニゅ!!あい!」
手にした積み木をひたすら渡し続けるエル(生後三ヶ月)。人と全く違わない姿の鬼人種の子供だが、成長はかなり早いらしい。
【大きく産まれて早く育つ】鬼人種達の成長はある年齢からゆっくりと推移し、その寿命は長命を誇る森人種にも匹敵するが……エルはおでこに角の先駆けのコブが見える以外は、何処にでも居るような金髪の可愛らしい女の子である。
「おにーちゃん、エルちゃんおっきいねぇ!!」
「そうだねぇ~、僕らよりおっきいかもねぇ~!!」
一緒に積み木遊びをしているカーボンとナノの二人は、背の高さは同種の犬人種と大差なく、同じ年頃の普人種達と比べると若干小柄である。外見は柔らかな毛に覆われていて、小柄な見た目と相まってかなりの愛嬌がある。
全般的に犬人種達の寿命は……長くない。彼等が天寿を全う出来たとしても、精々が六十年……普人種よりも早く召されるが、それを補うように彼等は大家族を形成し、そして家族を大切にする。アラミド家のように分家して小家族を形成する者も中には居るが、彼等も何よりも家族を大切に生きていく。
「……鬼人種の子って初めて見たかも?……ゴツいお父さんなら見飽きる程見てきたけど……あ、それまだ焼けてないわよ!!」
シャラザラードは伸ばされたフォークを素早く叩き落とし、自陣に肉を取り込みつつ杯を煽りながら横目で相手の杯が空いたのを確認して、傍らの酒を片手で注いでやった(全部マナー違反です)。
彼女達森人種は、そもそも種族繁栄、という発想がない。その長寿故に子供を産み殖やす事が生態系に及ぼす影響を理解しているせいもあり、更に成人までの長い成長期(精神的な意味)も相まって子を産み育てる長さは百年単位である。因みにシャラザラードは青春期真っ盛りの129才だが。
「あんたっ!!いつもそーやって片手で注ぐ!!下品だから止めなさいって毎回言ってるでしょ~がっ!!」
ギルモアはそう言いながら自陣の肉を奪われないように神経を使いつつ、けれど注がれた杯を煽りながらシャラザラードの動きに集中する(何してるんだか)。
森人種と同様に長寿の鉱人種は、やはり子供を増やすことに割りと消極的である。それは技巧に長けた彼等が、子孫よりも技術や質の向上に心血を注ぐ余りに愛情も流れ出てしまうから……等と揶揄する者も居るが、ギルモアのように分け隔て無く人と接する気質を持ち合わせている訳で、決してそうとは限らない。……たぶん。
「はぁ~、どんな種族でも赤ちゃんって、本当にカワイイわぁ♪……ねぇジャニス、二人の子供の予定はいつ頃なの?」
「はぶっ!?ま、まだまだ先だよっ!!……まだそんな余裕ないし……色々と……」
稀少種のニケとジャニスは子供達を眺めながら、新婚ホヤホヤの妹についつい聞いてしまう姉だったが、稀少種について判っていることは、普人種と子を成せる、そして……天寿を全うするまで生きる、ということだけである。寿命は個体差が有り過ぎて詳細は不明であり、その子供がどれだけの親からの能力を引き継ぐかは不明である。
しかしそんな彼女達の思惑など全く気にすること無く、リューマとエランの娘のエルは今日もスクスクと成長しています。ちなみに離乳期は既にぶっちぎりで、ふやかしたウドンが好きみたいです。
……エランは「毎日チチが張って堪らん」と悩ましげに巨嶺を揺らして困惑しています。まぁ仕方ない。
「ああぁ~っ!!エルのあたまにツノ出てきたよ!!」
「誠か!?エランッ!!オカシラツキを購ってくるっ!!」
……今日も集合住宅の中庭は、ほんのりと幸せな混沌に包まれておりました、とさ。
これで本当に最終話でした。




