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夢見て歩めば

お久しぶりです。サクッと書けたのでとりあえず更新致しました。



 「……っ!?」


薄い闇の中、ジャニスは目を覚ました。そこはあの大木のある街に在る宿の一つ。リューマと狐鉄とは違う部屋(狐鉄は宿には泊まらなかった)。


「……夢?……まさか……でも……」


【お目覚めかしら?ジャニスちゃん……】


聞き慣れた声はカミラのやや低い特徴的な甘ったるい声だった。思わず部屋の中を見回すが、何処にも彼女の姿は無かった。


【……まぁ、普通はそうなるわよね?……種明かしをすれば、あなたの持っていた呪符、少しだけ細工させて貰ったのよ……んふふ♪】


まるで面白い悪戯の披露でもするかのように、カミラの独白は続く。


【……まず、姿を変えて中央都市を出た所まではあなたの体験した通りだけど……そこからは()()()()()()()()()()()()()()()()()()


彼女の声が荷物の中から聞こえてくることに気付き、改めて見ると幾つかの宝玉の中に紛れた水晶珠から伝わってくる。

思わずそれを掴んでみると、まるで生きているかのように温かく、そして僅かに脈動しているのを感じた。


「じ、じゃあリューマさんや狐鉄は……」


【あの二人には一芝居打って貰っただけ。まぁ、最初はてこずったけど、私もその道の者だからねぇ~♪道すがらは本当に護衛して貰ったけど、今は距離を置いて見守って貰ってるの】


掌で淡い温かみを持った水晶珠は、まるで言葉に合わせて明減するように震えながらジャニスにカミラの声を伝える。それにしても、とジャニスは疑問に思う。何故、わざわざそんな回りくどいことを……。


【ジャニスちゃん、鼻息荒くして飛び出したでしょ?あー、絶対この娘、放っておいたら、まーた血塗れの道をすすむなぁ~、ってねぇ。御姉さん、ほっとけなくてねぇ……お節介しちゃった!】


悪びれずにあっさり言うカミラだったが、もしかしたら彼女はセイムスとジャニスが立てた【不殺の誓い】のことを覚えていてくれたのかもしれない。だが、幾ら自分が強くても、道連れが強かろうと、あれだけの人数を相手によく立ち回らず逃げおおせられたものだ。感心するよりも怖さの方が強い……。


「……一つだけ、聞いていいですか?……あの賞金稼ぎ達、どうやって撃退出来たのか……」


そう言った瞬間、水晶珠を通して冷気……いや強烈な悪寒が身を通り抜ける。それはまるで極寒の氷海に裸に剥かれて投げ込まれる、そんな死の落下の瞬間を意識させられる強烈さ、だった。


【……簡単だったわよ?蜘蛛の子を散らすって、こーゆー時に言うんだなぁ~って判った位にね!幻術って、心を持った生き物になら、区別なく効くから覚えていておいて損はないって、判ったかな?】


「はい、判りました……すっごく怖かったですぅ……」


ジャニスは水晶珠を通して心を操られていたことと、そしてカミラさんの底知れぬお節介振りに少しだけ畏怖を感じました。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「目覚めたか?ジャニス」


着替えて軽く身支度を済ませ、階下の食堂へと降りて行くと、先にリューマが長椅子一つを使って座っていた。その向かい側には不満顔の狐鉄が、つまらなそうに欠伸をしながらジャニスの姿を認め、


「ジャニ坊……お前、今は()()()()()()()()()()()()()


と、問い掛けてくる。余程カミラの幻術にやられたのだろうか、厭な物を見るような体で聞いてくる姿はジャニスには新鮮で、


「あら……私が私であるか証明しろだなんて、まだまだ術の効きが足りないのかしら?」


下唇に人差し指を当てながら、わざとらしくニヤリとわらって答えると、あからさまな嫌悪感を丸出しにした狐鉄は、別にそーじゃねーけどよ……、とはぐらかした。


「あははははは!ウソウソ!!あんまり珍しかったからつい、からかいたくなっただけ!」


明るく笑いながらカミラ風の雰囲気を止めると、狐鉄は信じきれなさそうに溜め息をつき、


「全く……お前が正気ならあっという間の路だったのによ!面倒臭いったらありゃしなかったぞ!」


ブツブツと不満げな表情で言いながら、果物を増させた朝食(彼等は何故か果物やナッツ類が好き)を取り始めるのを見て、ジャニスも注文する為に女将に声を掛けた。




「……で、あと少しで【牛と牧童亭】に着くけどよ……どーするつもりなんだ?まさかやっぱりかちこみます!って言い出して、あのおっかない蛇女(ナーグ)がしゃしゃり出てくんのはいい加減無しにしてくれよ!?」


「判ってるわよ……何だか話を聞いてたら、殺り合う気もすっかり失せたわ……カミラさん怒らせたら、どうなるか判ったもんじゃないって理解出来たし……はぁ……」


そんなことは無いと理解はしても、三日間近くも操られたまま動かされていた事実は、彼女に強烈な印象を残したのだろう。やれやれと言わんばかりの様子で呟いた後、ジャニスはリューマと狐鉄に宣言した。



「……話し合って、白黒つける。それで平行線になったら……その時はその時で考えてみることにするわ」




その後、三人は目的の酒場へと向かったのだが、そこで出会う相手は彼女にも想定外の相手だった。



短時間で書けたのはやはり余裕があるからでしょうか?戦闘特化の話から離れてみます。そんな訳でやっぱりお話はゆっくりと進んで参ります。

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