3
「なんだ、こりゃ…」
手元にあるなんらかの装置を見て呟く。
「俺が作ろうとしたのは腕時計のはずなんだが」
今俺が持っているのはどう見てもただの金属板だった。
あの後腕時計を作ろうとしたのだが、やはり複雑だったのかはわからないが俺はその場で意識を失った。
そして目を覚ました時に持っていたのがこのよくわからない金属板である。
しかし、偶然意識を失っている間何も起きなかったからいいものの…これから初めての物を作る時は、意識を失っても良いようにどこか安全な場所で身を落ち着けて作ることにしよう。
「んー…これについて、だが…」
改めて手元の金属板を観察する。
それは滑らかな金属と思わしき素材でできたものであった。
厚さは1センチほどで長さは5センチもないだろう。
幅は3センチほど。
平らではなく、微かに湾曲している。
「どうみても腕時計じゃない、よなあ」
様々な角度から見てみたが、特に何もめぼしい発見はなかった。
しばらく眺める。
なんとなく、左の手首に押し当ててみた。
「お、手首にピッタリの角度だな」
思いつきでやってはみたが、なるほど確かに手首にピッタリである。
もしかして腕時計を作ろうとした結果、作ることができずにこんな金属板を生むこととなったのだろうか。
だが、次の瞬間だった。
カシュッ、という音とともに金属板が手首を一周回るように伸びたのだ。
突然の出来事に驚いて思わず手を激しく振る。
しかしそれは手首に巻き付いたまま微動だにしなかった。
「…なんかバングルみたいだな」
手首に巻き付いたそれを様々な角度から観察する。
不思議なことに継ぎ目が一切見当たらない。
常識の範疇を超えた出来事に呆然としていると、さらに驚くべきことが起きた。
なんとバングルから1センチほど離れたところに平面上の映像、パット見てUIのようなものが浮き上がってきたのである。
青白い色をベースとして、そこには見たこともない文字が浮かび上がっていた。
「これは…」
そこに記されていたのは日付や時刻であった。
見たこともない文字だが、何故か読むことが出来る。
推測するにおそらくこれはこの世界の言語で、アスレルの力を受け継いだために読むことが出来るのであろう。
まあ確かに腕時計…ではある。
腕時計ではあるのだが。
「なんでこんなもんが…」
確かに腕時計を作ろうとはした。
だが、俺が作ろうと思っていたのは、転生前によく使っていた普通の腕時計である。
間違ってもこんなSF映画に出てくるような代物ではない。
しかも、だ。
こんな代物の構造など何一つ理解できていない。
結果的にはプラスだが…創造できるものの推定条件が振り出しに戻ってしまった。
□
あれからさらに1週間が過ぎた。
その間でわかったことは、このバングル(呼び名がわからないからこう呼称する)には時計以外にもいくつかの機能があるということ。
その中でも最も大きな収穫となったのは、このバングルには物を収納する機能があるということだ。
収納したいものに手のひらを向け、バングルのUIを操作すれば対象のものを収納することができる。
しかし無限に収納できるというわけでもなく、収納できるものはおそらくではあるが合計で仮設トイレの体積ほどに限られる。
また、収納しているものを出したいときは同様にUIを操作すれば取り出すことが可能だ。
ちなみに今の収納物は以下のとおりである。
・予備食料
・替えの服一式
・刀
28/60
最後の数値が最大収納量と現在の数値。
あの後、好奇心で日本刀を創造してみた。
あまり負荷もかからずに生み出すことができたため、作ってすぐに竹を生み出して斬ってみたが、その程度なら斬ることができた。
まあ、剣術の心得などないから斬るというよりも叩き斬るというほうが正しい表現だろうが…。
だが、斬ったとはいえ竹。
この世界でどこまで通用するかはわからない。
鉄の棒も同様に生み出して斬ってみた。
筋力が上がっているからいけると思ったんだが…。
結果はひどいもので、金属の棒は折れたが、同時に刀もポッキリと折れてしまった。
とりあえずもう1振り作ったが、今は倉庫の肥やしとなっている。
ちなみに試してはみたが銃は生み出すことができなかった。
まあ構造も何もわからないし、仕方がない。
これからも余裕があるときは様々な武器を創造して試してみよう。
次話あたりから一気に物語進めたいっ