TS姉(元兄)に可愛がられる弟の難儀な日常(仮)
☆始まりの日☆
僕の兄さん「佐々木空」は凄い人だと家族の贔屓目無しで言えると思う。成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗、小中高と生徒会長もやってたし、母さんが居ないのが普通の僕の家では料理も兄担当だ。でもそろそろ僕の頭を撫でるのが趣味って言うのは止めて欲しいな。さて何で僕が頭の中でこんな事を言っているかというと、今見てる光景が訳わかんないからなんだよね。1つ言いたいことはいつでも冷静って言ったって限度があると思うんだ。
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俺の弟「佐々木大河」が今年から高校生になるという時になって、海外の研究所で働いている母親から何かの小包が届いた。
「兄さん、これなんだろ? 母さんからみたいだけど。」
今俺に話しかけているのが俺の弟の大河だ。昔から大河を守る為だけに生きてきたが、その選択は間違っていなかったと思う。
「待ってろ、今開ける」
外見がただの小包に見えてもあの母親が何を送ってくるか……碌でもないものなのは確かだが。これは…栄養ドリンクか?『新開発!大河に飲ませてね!』とペンで書いてあるが……
「あ、僕に飲めって書いてある」
「待て、危険だ。俺が毒見をする」
あの母親のことだ、万が一があるとは思えないが、それでもゼロじゃない。風味は問題無いが……少し甘い…か?
「毒見って……流石に無いと思うけど…」
「そうだな、危険は無いみた…い……だ?」
なんだか、体が熱いような…やはり何か盛ってあったのか?やはり碌でもない奴だ……
そうして俺の意識は途絶えた。
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兄さんが倒れた。
僕はパニックになりそうだったけど、取り敢えず母さんからの包みを調べてみた。そしたら二重になっていて、中に手紙があった。
『多分これを読んでるのは大河かな?空が大河に私の作った栄養ドリンクを毒見無しで飲ませるとは思わないし(笑)さて本題に入るけど空に飲ませた薬は別に害は無いわ。ちょっと熱は出るかもだけど、空なら大丈夫よね(笑)薬の効能は明日の朝のお楽しみって感じね♪で、ここに生徒証があるでしょ?これを空に渡しといてくれる?じゃあお母さんからはそれだけ。アディオス♪』
なんで母さんは兄さんが飲むってわかってるんだよとか、(笑)とかふざけてるだろとか色々ツッコミたい事はあるけど!取り敢えず兄さんは大丈夫みたいだ。ていうかこの生徒証僕が今度から通う高校のじゃん。もう訳わかんないよ。
……兄さんベットに運ぶか…
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……どこからか鳥の鳴き声が聞こえる。そして太陽の眩しさが感じられた。……俺はどうしてベットに居るんだ?昨日母親から小包が届いて……栄養ドリンクに何か盛られたのか。そうして俺は体を起こそうとして気付いた。体が重い、視界にはなぜか黒く長い髪がある。手が小さくなっている気もした。……取り敢えず鏡を見に行くか。
「これは……」
そこにはこちらを見つめる美しい少女が居た。やはり薄々気づいてはいたが女になっているようだ。やはりあの母親は碌でもない事しかしないな。
「兄さん、起きたんだ。って…誰?」
大河も起きてきたようだ。しかし実の弟に誰?と聞かれるとは…な。不味い視界が潤んできた、女になると涙腺も緩むのだろうか。
「おはよう、まず朝に会ったら挨拶をしなさい大河」
「あ、うん。おはよう……って違うよ!もしかして兄さんなのかな?」
やはり大河はいい子だな。直ぐに俺を兄だと認識してくれたようだ。
「ああ、今日から兄さんは姉さんになる。しかし大河を守る事に変更点は無いから安心しろ」
俺はどんな姿になろうと大河を守る事は決定事項だ。女になった所で変わりはしない。
「そういう問題じゃないよ!?僕が心配してるのはそこじゃなくてムグッ」
「ありがとう、心配してくれるのか。これで姉さんは大丈夫だ」
つい感極まって昔やってた様に大河を抱きしめて頭を撫でてしまった。やはり大河は可愛い。目の中に入れても痛くないとはこの事だろう。
「ぷはっ、苦しいよ!兄さん!」
「ああ、すまない」
そう言って俺は手を離した。いつの間にか呼吸を阻害していたようだ。なんだか大河の顔が赤い気がするな、風邪かもしれん。
「大河、顔が赤いぞ。風邪か?」
俺はそう言って大河の熱を測る。ふむ、少し高いな。俺の額とは随分温度が違う。
「ち、ちが、もう離してよ!」
何と言うことだ、反抗期だとでもいうのか。俺の大河が……なんだか更に赤くなっている気がするな。
「やはり風邪かもしれん、お粥を作ってくるからベットで寝てなさい」
「はぁ、もう……大丈夫だってば。そう言えば母さんがこれを渡してって書いてあったよ」
大河が手紙と生徒証を渡してきた。生徒証には『私立天清高校 第一学年 佐々木空 女』と書いてある、入れというのか……
こうして俺の女としての人生は始まりを迎えた。