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4thスティント

翌日の日曜日、待ちきれず皆で休日返上で作業する。と言っても今までもそんな感じだったのだが……

昨日試験したのでエンジンの簡単な整備をし、車体に載せることにする。改良は出来てないがそれを待ってたらいつまでも走れないので仕方ない。今後のテストでは未改良の箇所は交換部品を何セットも持って行き、走行距離に応じて順次交換するという爆撃機B29のエンジン方式で対処する事になった。由良さんが車体を整備しやすいように設計してくれて助かった……。尤も、クランク軸は強度を持たせたのに変えてはある。

室内クレーンでエンジンを持ち上げ、マシン本体に取り受ける、シャフトも位相を合わせ、各種配線も繋げる。後は試運転をして各部のチェックをするだけだ。

「始動するぞ」

俺の合図でセルモーターが回り、ワンテンポ遅れてエンジンがかかる。野水は異常がないか画面で、俺と由良さんと本田は目視で確認する。

「特に問題なさそうだね」

「……暖気が終わってからが本番」

ある程度して一旦エンジンの火を落とす。本田が金槌を片手に打音点検し

「ボルトも緩んでないし異音も出てなかったよな。いけるぞ!」


「ついに完成したんですね……」

「やったわね! 早く乗りたい!」

皆でマシンを眺める。ある者は遠巻きに、またある者は舐め回すように(主に由良さん)

「感慨深いってこんな感じなのかな」

「そうだね、最初は拉致同然だったけどいざ完成すると感動だよ」

カナード等が無い為すっきりした見た目だ。由良さん曰く――美しいマシン――に仕上がった。同時に、無駄が無さ過ぎる車体は美山さんに指摘された――ダウンフォースの不足――の問題が解決していない事を表している……。まあ、最高速重視だとこちらの方が良い可能性もあるし、そういう方向でデザインしたのでその辺は仕方ない。ただ、走らない事にはなんとも言えないが。

と、完成したマシンを見て光が一言

「ちょっとこれ、サイドミラー無いじゃないの!」

今気付いたのかよ。

「……中にある」

「何でそんな事するの?」

「……空気抵抗軽減」

「そんなんじゃ後ろ見えないじゃない!」

「……大丈夫、搭載例も結構ある」

確かアメリカのレースでは車内にあるのが主流なんだよな。かつてのプロトタイプカーレースでもやってたチームあるし。後は慣れだろう。

「でもあれカメラついてるだろ?」

本田の指摘に

「……」

由良さん、何故目を逸らす!

「まあまあ、一度座ってみては?」

「それもそうですね」

部長の言葉で光が乗り込んでいく。

「どうだ?」

「あ、意外といけるかも」

「……よかった」

「今——よかった——って言ったよね?」

「……気のせい」

ってことは由良さん自身も半信半疑だったのかよ!

「ところでこの車」

「……車じゃない。マシン」

「どっちでもいいじゃん」

「……字は『車』でいい。でも読みは『マシン』」

車と書いてマシンと読むのか。まあマシンの方がレーシングカーって感じだからわからんでもない。

「まあ由良さんがそう言うなら僕も従うけどさ……。それで、どうやって運ぶの? 後テストは何処で?」

野水のこの一言で全員が固まった。

「ト、トランスポーター(別名トランポ。マシンを運ぶためのトラック)でいいんじゃないかな? 鈴禾監督と美山さん来るし!」

「光、あの坂をトレーラーが上れると思うか? そもそも途中で曲がれないだろ……。場所は部長にあてがあるらしいから大丈夫だ」

周知するの忘れてたな。頼まれたの俺なのに・・・・・・

「じゃあ場所はいいとして、で、どうするの?」

「滑走して旧国沿いまで走ろうよ。行きは下りだし。で、チームのトランポを・・・・・・」

「それだと帰りが登りだから問題だ」

伊○家の食卓でタイヤを直接回すと楽だと言っていたが、流石にあの登りだと骨が折れる。

「そもそもいくらエンジン掛けてなくても公道走ったら駄目だろうし、それに突然来てって言われても向こうも困るだろう」

「すみません、森君以外の皆さんにはお知らせしてなかったですね。場所は後ほどお教えするとして……。分解して運ぶとかですか?」

「……偶になら良いけど毎回だとそれは手間」

う~ん……、どうしよう? 俺含めて誰も考えてなかった。肝心な事なのに……

こういう時平地が便利だとつくづく感じるな。……まあ結局運ぶんだが。

「じゃあ親父の知り合いに当たってみるか。工場仲間だから誰か小型の持ってるかもしれない」

「では本田君、すみませんがお願いします」

「おう! まかせとけ!」

「でも今日はどっちにしても無理だよね。今日は解散?」

走らせるまで一週間お預けか……。俺は昨日の結果を野水と話し合いたいけど、他の人はやること無いし解散かな?

「ねえ義正、話題全く違って悪いんだけど、御祓いはしないの?」

そうだな、大事な儀式だからちゃんとやらないとな。

「え? 車・・・・・・じゃなかった、マシンにも御祓いとかするの?」

「当然でしょ。野水、あんたんちはしないの?」

まあそこは人によりけりだよな。でもどうしよう? トランポ調達できたらそれで神社まで? それとも神主さん呼ぶか?

「……式は任せて。明日道具持ってくる」

由良さんって神社の娘さんだったんだ、知らなかった……。

「でもジャンル大丈夫なの?」

ジャンルってお前……

「……交通の神さんだから問題ない」

「ゆ、由良さん! もしかして巫女服?」

「……それは着ない」

「がーん……」

自分で擬音を言うな擬音を。


月曜の放課後、由良さんの親御さんが部室に来られた。中嶋先生も同席し、今後の安全祈願をする。カウルをとって内部も大幣を振っている。結構本格的だなぁ、いや、本物の神主さんだけど

「……これうちのお守り。車内に貼って」

終わったら由良さんからお守りを貰った。吊るしたら危ないからな。場所は助手席側にでもしておくか。

「ミコフクガミコフクガ」

まだ言ってる……

「罰当たりはほっときましょ。で、今日はもうやること無いわよね?」

「部品造るか?」

「いえ、これ以上同じのを造っても不良が出たとき対処できないでしょう。一旦様子を見ては?」

それもそうだな。この前のテスト結果を元にマッピングも変えてみよう。

「野水御免、ECU手伝ってもらっていい?」

「いーよー」

一応致命傷は無かったが色々問題は出たベンチテスト。でもあれだけじゃあどこを改良していいかのデーターが少なすぎる。車体はまだ走ってないのでそもそもデーターが無い。今出来て効果があるはECUの調整だった。

「走行試験は週末だから今の内に作っといてねー。そしたらあたしも意見言いやすいから」

光るめ、他人事だと思いやがって・・・・・・。まあ実際あいつは今は何も出来ないし仕方ないか。今週仕事あるのは俺と野水位か。って野水休みねーな……

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