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17thスティント

 美山さんと関さんががそう叫んだ直後、マシンがスピンし、後部から駐車場のブロック塀に激突する……寸前で止まった。俺はその瞬間マシンに向かって走り出していた。他の皆も消火器を持って走ってくる。光本人は無事なようだが、中々マシンから降りる事が出来ない。皆は一応消化器を掛けている。俺は外から

「無事か!」

と叫ぶと同時にドアを開けた。光はゆっくり出てきてヘルメットを脱ぎ

「……ありがと」

と言った。車内が結構暑かったのか顔が若干赤い。

「まあ無事でよかったよ」

俺は光の頭を撫でる。……ますます顔が赤い、熱中症気味か?

「でもテスト中断しちゃった。まだ全部予定消化してないのに……」

「いいさ。こういうのも俺達にとっては経験だし」

そんな話をしていると隣から小端さんが、

「マシンの回収はこっちでやるから、二人は戻って良いよ。機材は君たち使えないしね」

「「ありがとうございます」」


 戻ると光が関さんから怒られた。

「馬鹿! ブレーキ遅すぎだ!」

光曰く、テスト中どのくらい奥まで突っ込めるかやってたのだが、最後はさすがに奥すぎたとのことだ。まあそれらもテストの一環ではあったのだが、いくら何でも無茶をしすぎた。最後は冷や汗を掻いたが、何とかテストは終了した。

 そしてテスト後のミーティング、本日の結果を一先ず話し合う。勿論詳細はまだのため詰めはまた今度だ。その中で美山さんが

「で、結局エンジンは最後まで持つんか?」

担当である俺はそれに答える。

「6,000以上は回さなければいけると思います。それを越えると負荷が大きくなりますし、それに冷却が間に合わないと思うので……」

「それって使えないってことじゃん!」

光、解ってるから突っ込むな……

「まあそうやろうな。今回で一応洗い出しはやったけど、改良間に合うんかいな?」

「間に合わせるんですよ」

俺が静かに、しかし闘志を込めて言うと、

「無理だな」

むっ、後ろから闘志を削る声が

「プロのエンジニアでもシーズン中のエンジン改良は難しいんだ。まして学生で、しかも後一月しか無い状態で設計から製造からテストまでどうやってやるんだ?」

確かに授業受けながら、しかも中間試験もしながらだと圧倒的に時間が無い。そもそも試験中は部室に入れない。しかしそこまで言わなくても……

「まあまあ関」

「美山さん、あなたも遠回しに無理だと言いたいんじゃないですか?」

「……」

美山さんが無言になる。って事は同意見なのか……

「俺達はのんびりツーリングをしに来たわけでも、湯を沸かしに来たわけでもない」

「ちょっと! いくら何でもそれは言い過ぎじゃないの!?」

光が関さんの言葉に反論する。

「ちょっと黙ってな、それと目上には一応敬語を使え。……だから森、お前は燃調だけに集中しろ。」

「え?」

いや、それだけって

「冷却が不十分。しかも耐久上高回転まで使えないなら、あとは燃費で勝負するしかない。どうせ燃費を計算して走ると上を使うことは少ないんだ。だったら徹底的に燃費を稼ぐ」

「燃費を稼ぐ……」

「あぁそうだ。俺達はプロのドライバーだ。エンジンを冷やしながら走るなんてよくあるし、特に耐久ではそれも重要なテクの一つだ」

「そうやな、幸い5lV8シングルターボて昔のグループCで走っとったメルセドス参考にしたみたいやからな。高出力はもちろん、高燃費も狙っとったんやろ?」

「あぁ、はい。少しは……」

実はサイズだけで決めましたとは今更言えない。

「……こちらも、ドラッグもギリギリまで削って抵抗減らす」

「足回りのセッティングは任せろ! きっちり地面掴めるようにするぞ」

由良さんと本田が気合いを入れて言ってくれる。

「それが終わったら、あとは俺達の仕事だ。なあ? 高橋?」

「解かりましたよ。上を使わなかったら良いんでしょ? まかせなさい!」

光が腰に手を当て胸を張って言うが正直

「俺はお前が一番壊しそうで心配なんだが」

「何か言った?」

「いや何も」

危ねー。声に出てたか。


 十月二週目の金曜日、俺達は裾野スピードウェイまで来ていた。今日はフリー走行の日。マシンについてだが、夏からの改良点はエンジン周りだけなので、基本性能は前回と同である。

「一先ずクランクケース一部削って、負荷が一箇所に集中しないようにはした」

「ただ応急だからな、あくまでマシになっただけだ」

本田と並んでマシンを見ながら言う。

「……しかもテストも不十分」

近くにいた由良さんも呟く

「まあ嘆いても現実は変わらんからな、今の中でベストをつくそう」

監督が俺の肩を叩きながらそう言った。

「でも裾野でよかったね。ロードラッグ仕様しかなかったし」

お前も、ハイダウンフォースだと踏む時間長いから怖くなくて良かったな!


 フリー走行の結果を確認し、前回の不備を踏まえ、万全(になるのか?)の体勢で作戦(というより展開)を考えていく。ちなみに今回は予備予選は無く、車検さえ通れば決勝で一応走れる。

「練習からいくと、作業時間は給油、交代を入れた場合55秒だな」

「あまり早くないですね」

「燃料積まないといけないしな」

「1スティントでの周回は……」

「明日の予選について……」


ミーティングも終わり、最後に光が一言

「目標は……優勝よ!」

一同「「無理」」

「そ、そんなに言わなくても……。目標なんだし……」

「気持ちは解るし気合いも良いが、それと現実は違うからな」

中嶋先生の冷静な一言でこの日は終わった。

各話に題名付けるべきだった……。自分で書いてて何処にどの話があるかわかんねーw

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