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14thスティント

TOY○TA-! ホームで負けたら世話無いぞ!


H27.11.03:一部プロットのメモが残ってたので修正

H28.01.19:〃

部長から無線が飛ぶ

「光さん、次の週入ってください。タイヤ全交換、燃料満タンでドライバーも交代します」

「了解」

するとすかさず監督が

「安心して気ぃ抜くなよ?」

「わかってます!」

「ならよし」

こういう無線は結構あるらしい。ピットインの指示が出ると、ドライバーによっては気が抜けてタイムが落ちる場合がありそれを防ぐためだ。プロもやっぱり人間なんだなー、と思う瞬間。

こっちは無線を飛ばす前にタイヤもドライバーも準備は既に済み、いつ入ってきても大丈夫だ。……マシンに慣れてないこと以外は。


 マシンがシケインを抜け、最終コーナー手前からピットレーンに入ってくる。そしてストップボードを飛ばしそうな勢いで停止……っておい! 今ちょっとクルー飛ばしただろ!

しかし流石プロ、痛がる素振りも見せず作業の指揮に入り(※)、同時に他のクルーも作業に入る。

「高橋、交代や!」

美山さんとクルーの人がドアを開け光を引っ張り出す。狭い開口部を何とか出て賺さず美山さんが乗り込む。

「頑張ってください!」

美山さんに声をかけながらシートベルトを締めるのを手伝い、ドアを閉める。すると丁度タイヤ交換が終わりジャッキダウン今度は給油に入る。

「OKです!」

給油ホースを抜いた瞬間ロリポップ(※1)が反転、エンジンを始動し勢いよく出て行く。


「やっぱ遅いなぁ」

「あと十秒はいけますかね?」

クルーの方達の話が聞こえてくる。素人眼にはスムーズに見えたのにあれで遅いんだ……。しかも十秒って相当違う。思い切って訊くと

「ホースとかの取り回しを見ながらしてたし、ジャッキや給油ホースを填め込む時も一発じゃなかったからね」

「ドライバー交代も手間取ったからここも要改善点だな」

他にも何点か指摘された。同時にぶっつけ本番で事故が起きなくて良かったとも。……轢きかけましたけどね。


一回目のピットストップを終え美山さんがコースへ復帰、すると監督が

「美山、一応言うがアウトラップ(※2)だぞ」

「りょーかい」

これもいつもは――アウトラップでもタイムを落とすなよ――と云う意味である。が、今回はいつもと違い――気をつけろ、慎重に――の意味らしい(あとから聞いた)

「データー取りが目的なの忘れるなよー」

美山さんがわかった上で念押し、やっぱりドライバーはついつい攻めてしまうのだろうか?


美山さんが出たのを見届けて光がパドックに入ってくる。ヘルメットを脱いで一言

「づーがーれーだー。やーすーみーたーいー」

「お疲れ。だけど状況報告が先だ」

スタッフにスポーツドリンクを貰いつつ連れて行かれ、それを飲みつつ監督や他のスタッフと話す。

「ダウンフォースが……」

「タイヤと……」

「それと……」

光が乗った感覚とPCに飛ばしたデーターを照らし合わせていく

「次に森とエンジンについて話せ」

監督から指示を受け、光がこっちに歩いてくる。

「義正、どうにかならないの? 長距離だから燃費とか考えて回さないのもわかるけど、これはあんまりじゃない? 回さないのと回せないは違うよ?」

腕を組み、睨み付けるように言ってくる。相当ストレス溜まってるようだ。

(何だよその言い方)

俺は眉間に皺を寄せつつ

「仕方ないだろ? 間に合わなかったんだから」

「間に合わない間に合わないってそればっかり」

「事実だし、そもそも最初から……」

「今はレース中だ。監督からはマシンの状況を話し合うよう言われただろ、しないんだったら少し静かにしろ」

見かねた関さんが俺達二人に注意する。何で俺まで……

「それに美山さんから無線聴くよう言われてなかったか?」

そうだった……。皆そういえばヘッドホンしてる。俺達はピットウォール(※3)まで急ぎ移動する。


……そのころ皆は

「二週目でタイヤ温まったし、ほな実況するでー」

監督(……本当にするのかよ)

アウトラップ後、宣言通り無線でコース上がどうなっているのか実況し始める美山。

「最終コーナー内からGTP抜くデー」

「6000シフトでホームストレート」

「ここはダウンフォース不足で踏めん」


美山さんが何周かして俺達が合流、ヘッドホンを装着し皆に加わる。

「……遅い。必要以上に話しすぎ」

「「御免」」

二人して一応謝る。突っかかってきたのは光なんだけどなぁ。

「お! 視聴者増えたって? ならもうちょい延長するで」

監督「マジかよ……」

その後も何周か美山さんの実況を聴いて、皆各自持ち場に戻っていった。


野水やスタッフがテレメーターと美山さんの無線を参考にデーターを集めていく。

「数週ずっと無線とかすげーな」

「普通は流石にここまでしないけどな」

本田と関さんも何やら話し中。俺もその中に入らせてもらう。

「そういえばドライバーによって、よく喋る人と返事くらいしかしない人がいるらしいですが関さんはどっちですか? 美山さんは想像つきますけど」

本田が無線のことについて関さんに質問する。俺もそれは若干気になる。

「自分では普通だと思ってる。……言っておくが実況なんかしないぞ。必要な事は言うが」

そりゃ普通そうだ。

関さんはそう言い残して他のスタッフの所へ行く。そして2・3歩行って振り向き様

「そういえば他のチームも見てきたらどうだ? 参考になるぞ」

「え? 大丈夫なんスか?」

本田が率直な疑問を口にし

「あぁ、偵察もやったりしてるからな。もちろん邪魔は駄目だぞ」

そんな答えが返ってきた。そりゃ当然だ、邪魔なんかしてはいけない。でもそういえば、TVとかでも他チームの偵察が何とかって言ってたな。しかし

「いや、今回はやめておきます。オレら自分ので精一杯なんで」

「そうか、ま、気が向いたら近くのスタッフに一言告げればいい。勝手に行かなければ許可してくれるだろう」

「ありがとうございます」

俺も本田も今日は無理。後悔しそうな気がするが、まずはレースの雰囲気に慣れるのが先かな?


そんなこんなで美山さんが出て30分後、岡山でも出たような不穏な振動が出始める。

「テストより全然早いな」

「他車がいるぶん強弱があり、その分負担がテストより増えますからね」

「それ差し引いても早い。他にも原因ありそうだな」

……岡山のテストの時より症状が出るのが早いらしい。確かにあのときはまだ走行距離的には大丈夫だった。


「燃費もきついな」

「美山がさっき言ってた通り、結構アフターファイアー吹いてるしな」

そう、アフターファイアーが出るということは未燃焼ガスが残っている証拠だ。これも今後どうにかしないといけないな……ただ、今は信頼性向上が先だ。その為にも限界まで走ってもわないと。


「バイブレーション酷すぎやから一度戻るで!」

美山さんがたまらず戻ってくる。一度ガレージに入れ、カウルを開けるが、

「これもっと内側だろ。もっと降ろすぞ」

本田の言うとおりカウル取り外すだけでは修理出来ず、更に外して原因箇所を探すが……

「これ応急じゃ駄目だよな……」

「……始めから分かってたこと」

由良さんと覗き込みながら話すが、ガレージでどうこう出来る状況ではなかった。

「一先ず各箇所締め直して、ドライバーには我慢してもらおう」

小端さんが俺達に指示を出し、それ通りに作業。ついでに給油をし、何とか十分で出すことに成功した。いや、成功とはいえないか…・・


3スティント目は酷かった。美山さんが2スティント連続でドライブするが、トラブル頻発でずっとピットと無線で話してる。当初の余裕なんか殆ど無い。本当は戻った方がいいと思うが、これもデーター収集である。

「あかん、戻るで」

「タイヤカス拾ってってオチじゃないだろうな?」

「それならえかったんやけどなー。水温も結構上がってきょぉる」

「わかったこのピットで関と交代だ」

監督と美山さんの無線を聞くが交代のようだ。三人一応走らせたいとの事だろう。関さんは既に準備万端だ。

光の様子が視界に入るが、相当イライラしているようだ。今までこんなにトラブった事が無いらしいからな・・・

まあカートは基本所謂吊し(※4)のようなもんだし、開発しながらレースってあまりやらなそう。


戻ってきたマシンをもう一度ガレージに入れるが……

「これは無理でしょう。これ以上走ったら大事故になりますよ。監督、リタイアを進言します」

小端さんはお手上げと判断。確かにこれ以上アー無理か・・・

「しかたない、リタイアすr」

「嫌!」

監督の言葉を遮り光が叫ぶ。

「光、監督の指示なんだ。それにクラッシュして他のチームに迷惑かけるわけにはいかない」

「だからメカニックが直すんでしょ! 諦めたらそこで試合終了じゃないの!?」

光が涙目で叫ぶ。いい加減腹立ってきた。こっちだってリタイアしたい訳じゃねえよ!

「それが無理だからリタイアなんだろ! 出来るならやってるよ!」

「じゃあやってよ! そもそもなんでこんなエンジン作ったの義正!」

「じゃあって、じゃあお前がやれよ!」

「えーかげんにせーや!」

美山さんの声に思わず黙り、徐々に冷静になっていく。気付くと他のチームの人達も覗き込んでいた。

「チーム内で喧嘩しどないすんねん。契約した以上は仕事するけど、そんなんやったら俺らはあんたらに命預けれんで?」

「そういうことだ。烏合の衆で終わるか、狼の群れへ進化するか、ここが正念場だな。ま、楽しみにしてるよ」

俺は呆然と立ち尽くし、光は泣きながら何処かへ走り去っていった。


撤収作業の最中

「なあにが狼だよ。……結局乗れなかったな」

中島が苦笑いしながら関に話しかける。

「中島先生……。別にいいですよ」

関は一瞬顔だけ振り向いてそれに答え、また元に戻る。中島は関の肩に手を置きつつ

「嘘吐け、一番乗りたかっただろう」

と言い、関は未だガレージに置かれているマシンを眺め言う。

「今はあいつらのマシンです。そして自分は現在そのマシンを使うチームに契約したプロです。それ以上でもそれ以下でもありません」

中島は関の背中を数回叩き

「格好つけやがって」

そう言うと現在の生徒の元へ歩いて行く。

パドックの隅では、中島と関のそんな会話が交わされていた。


※:ピット作業には人数制限や同時作業制限がある。ちなみにこの物語の中ではWE○2015年規定と同じ。

※1:ロリポップとはピット中にドライバーに指示を出す標識の事。語源は形状が飴に似てるから。

※2:ピットイン(特にタイヤ交換)をした後最初の週の事。タイヤが温まっておらずタイムが出にくい。この週を上手く処理するのが腕の見せ所。

※3:コースとピットロードの間に設けられた壁、特にそこに設置される指揮所を指す。

※4:市販の意味であり、特に無改造車を指す。


またも結構時間が開いた……orz

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