表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

11stスティント

「何とかなったな」

予備予選は一応通過することができた。のだが……

「何であれだけで壊れるのよ!」

「仕方ないだろ! テスト結果の反映さす時間無かったんだよ! てか——走る―—だけならできるよ! でもすぐオレンジポール出てガーレジで手術なんか嫌だろ!」

そう、ローダウンフォース仕様にもかかわらず、あれだけのタイムを出した反動は大きかった。なんたってコーナでタイム稼げないから、後半の高速区間でいかに最高速で抜けるかを考え、耐久性も何もかも無視してただ出力だけを絞り出したのだ。

「やっぱ美山さんか関さんの方がよかったんじゃあ」

俺達の光景を横目に野水が溜息をつきつつ言う。聞こえてんぞ。

「初の実戦くらい造ったメンバーでやりたいやろ? まあ次からはそんなん無いけどな」

記念として光は乗らせてくれたのか。

「ただ、――ひかる―—ものはあったな。……光だけに」

「では今後の予定だが……」

あ、監督が無視して続けてる。

「何や、無視せんっとって! 空しい……」


「さて直すか。でもどこら辺が原因なんだ? 午後から公式予選だからあんま時間無いぞ? おれは飯も食いたいし」

食える暇あると思ってるのか? でも、今年の規定だと直さないと午後走れず失格だしなぁ……

「はい、胃カメラ」

「え?」

胃カメラ? 何で?

「こういう時はね、胃カメラでチェックするんだよ。まあやった事ないみたいだから今日は俺がやるね」

「ありがとうございます!」

と、小端おばたさん(岡山でもお世話になったけど今回初登場のメカニックの人)から言われ、無理だから頼んだ。

それにしても、こんな状態だとどっかの半島が造った戦車のエンジン笑えないぞ!


「間に合わねー!」

必死になって直しているが絶対間に合わない……。日頃から分解修理はしているが、こういう場合の手順を打ち合わせていなかった。チームの人達も手伝ってくれているが、それが出来ていないため手持ち無沙汰になってる人もいる。監督も今回は俺達に経験さすためか、そんな状況でもあまり何も言ってこない。普段なら罵声が飛び交うんだろうな。

「後予選時間五分しか無いよ! まだ!?」

うるせー! こっちも今出来る範囲で急いでるんだよ!

「予選走れんかったら失格やけど……。監督ちょっと」

ん? 監督と美山さんどうしたんだ? って余所見してる場合じゃない。

「あ、終わった」

野水がコース上にある時計を見て言った。マジかよ……

「何だよ、予備予選だけ走ってオレ達の初戦は終わりかよ」

皆意気消沈している。あぁ、ここで俺達のレースは終わ

「皆良く聞けー。運営の計らいでゼッケン外で本戦出れるぞー」

らなかった!?


「いやー、運営の知り合いにちょっと事情説明してな? そしたら運良くOK出たんやで」

「運良く……、よく言いますね」

関さんが半眼で美山さんを見る。多分大丈夫との確信があったんだろう。美山さんの人徳がなせる技である。

「「ありがとうございます!」」

俺達は頭を下げる。

「まあまあ、ピットスタートやけどな」

それでも俺達は頭を下げ続けた。


というわけで、予選は通ることが出来なかったが運営の好意により特別に出られることになった。美山さんの言う通り、もちろんピットスタートだし、本来なら入賞する順位でゴールしてもその扱いは無い(まあ絶対無理だけど)。ちなみにゼッケンは本来なら無い二百である。(1〜がP1、50〜がP2、100〜がGTP、150〜がGTA)

「で、明日までに直さないとな」

「そうだね、今日は徹夜かな?」

「何か実戦! って感じだな!」

本田と野水が壁にすがりながら話している。てかそのテンションで本田は最後まで持つのか? あいつなら持つか。

「でも作業する前に食事はしましょう」

「……腹が減っては戦はできぬ」

俺達にも燃料は必要だ。そしてただ食べるだけではなく、その時間で打ち合わせもやる。時間は貴重なのだ!


明くる日、本番

「眠い……」

修理が深夜まで及び、あまり寝ていないためかなり眠い。え? 修理箇所はどこかって? 面倒、言う元気無い……。まあエンジン降ろしたとは言っておこう。

そしていよいよ本戦だ。晴天で雲一つ無い。真夏の太陽は容赦なく照りつけ、気温は三十度を優に超え、路面温度も六十度近い、人にもマシンにも過酷な状況だ。特に俺達のマシンは冷却にも不安があるというのに……

「いよいよ始まるな」

「……興奮する」

由良さん、そんな風には見えないんだけど

「まあピットスタートだけどね」

「でも初レースだぜ!」

野水は平然、本田は徹夜でその元気かよ。


今回は作戦を考えていない。本来タイヤや燃費、そしてマシンへの負担を考え、その上でラップタイムやピット回数、ピットストップの時間を想定するのだが、初レースという事でとにかくいけるとこまでいってみようとなった。と、いうことより実は、ピットの練習を余り——と書いてまったくと読む——していなかった。造る事ばかり考えていた。予備予選でその事に気付いたのだ。チームの人も俺達が練習しているだろう考えてまかすつもりだったらしい。だが実際は全くやっておらず、急遽チームの人達がピット作業をすることになった。当然、いつもしている事なのである程度は出来ても、マシンによって交換用のタイヤを置く位置、給油口の位置、それによって給油ホースの取り回しが違ってくるためやはり事前に練習は必要だ。それなのに今回はぶっつけ本番、ベテラン方でもピットタイムがどうなるかわからいのだ。

「今回はデーター取りがメインだな。致命傷にならない限り無理してでも走らせる。ガス欠になったらそれもできないので給油は余裕を持たせる。そのつもりで」

監督がミィーティングの最後にそう言って締めくくった。


午後一時、ペースカーの先導でフォーメーションランが始まり、各車ゆっくりとスタートしていく。各マシンともタイヤを暖めるため蛇行運転をしながらゆっくり回っている。

「さて、俺達も準備だ」

ガレージから車を出し、ピットレーン出口で止まる。後は全車スタートの後、信号が変わるのを待つ。スタートドライバーは光だ。

これも皆が記念にと譲ってくれた。

「一周目から壊さないでよ」

「んな事するわけないでしょ!」

野水が無線で一言、光は叫ぶが、まあリラックスはできただろう。……マジで壊すなよ?


ペースカーが最終コーナーに差し掛かったところでピットに戻っていく。一瞬の静寂、嵐の前の静けさとはこのことだ。

「スポーツプロトタイプカー全日本選手権第6戦、伝統の伊勢湾1,000kmレース。真夏の太陽の下、この日本で一番過酷なレースを制するのはどこのチームか? 灼熱の三重ラウンド! 1,000km先の栄冠へ向け、隊列が整い……今スタートです!」

実況はは下○さんイメージです。ただ最近レースの実況してないらしい?

BS日テレ放送時代は視てましたが、有料は入ってないので現在の放送席はあまりわからない・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ