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10thスティント

この世界の130Rは改修されてないらしい。

「このままじゃ通らないわよ!」

光が無線で言ってくる。それに対し監督が苦渋の表情で無線を飛ばす。

「一周で決めろ」

「監督!」

たまらず叫ぶが

「仕方ありません、せめて予選までは進みましょう」

部長も監督に同意のようだ。

「しかしそれだとその後が!」

「今でもギリギリなのに後の事を考える余裕はありません」

そう言われたら黙るしかない。まあ一周位なら大丈夫だと思うけど、それでも昨日の練習走行のダメージが気になる。ベンチとはやっぱ違うし。てかよくこれで車検と通ったよ。


日曜の午前中、初参戦やスポット参戦のチーム用に予備予選が行われる。あまり多くの台数がコースで走ると危険な為、そしてガレージの数にも限りがあるため、その篩い落しである。尚、シーズン戦でエントリーしているチームは当然これは免除されている。十五分の制限時間内にタイムアタックを行い、台数を絞って行く。ちなにみ今回の通過可能台数はP1が一台、P2が二台、GTPが一台、GTAが三台で、ピットギリギリの四十八台だ。前出の遣り取り(やりとり)は其の時のものだ。


残り五分、現在俺達のチームは1.55秒台中盤でクラス五位だ。……と云うより最下位だ。トップは1.51秒台前半で、二位は51秒台中盤、だから、俺達は四秒半あと縮めないと予選には進めない。

「上位がのくかもしれんからもうちょい待つんや。運が良かったらクリアラップ(前方に自車より遅いマシン等がいない状態)やで」

美山さんも光へアドバイスを送る。今回の予選はその時間内であれば何回でもアタック出来るし、逆にマシンをいたわって途中で切り上げるチームもある。俺達はそんな余裕無いため時間目一杯使う事にする。……本音では切り上げたいけど。


残り約二分

「高橋、前あいたぞ。アタック中はトラブル以外の無線はしない。集中したいだろ?」

監督からゴーサインが出る

「はい! 丁度シケインです。タイミングバッチリ! 行きます!」

今までと違うアクセルの踏み込み量で最終コーナーを立ち上がっていき、目の前を通り過ぎて行く。

「それにしも、最初はあんなに怖がってたのにな。森に抱きついたりしてな!」

恥ずかしい事思い出させるな!

「……以外と大胆だった」

だから俺じゃねえ!

「今はアタック中だよ」

画面視ながら声だけ野水はこちらに向ける。

「「「すいません」」」


(まだちょっと怖いけど、そんな事言ってられない。わたしが言い出したんだし、ちゃんと通らないと!)

ホームストレートを六速全開で駆け抜けて行く。一コーナー手前の看板を目印に一回目の減速、そして一コーナーと二コーナーは実質複合コーナーで奥の方がきつく、更に二回目の減速は右に曲がりながらの減速となるため不安定になりやすい。しかもカーボンブレーキ(ブレーキローター及びキャリパーがカーボン製。非常に強力だがデリケート)なのでより慎重にクリアして行く。しかし慎重過ぎてもいけない。其の先がストレートであり、加速が遅れると速度が乗らない。

(慎重に、でもグリップが回復したら大胆に!)

少しの直線の次は伊勢湾名物連続S字コーナーに突入する。ここは最速ラインが一本しかなく、少しでもはみ出すとタイムを落としてしまう。しかもそれだけではなく、コース幅も狭い為コースアウトしてしまう事もあり、尚かつコース外の安全地帯は昔ながらのグラベル(砂利)で、一度嵌ると抜け出せない。更に曲線半径、バンク角、勾配も逐一変化するためかなり難しい。「ここを制する物は伊勢湾を制する」とまで言われるほどだ。

(横Gばっかで息出来ない! でも踏ん張らないと。ライン外したら一巻の終わりだし!)

S字をリズム良くクリアし、第一デリーコーナーに飛び込む。

(やば! 少し落としすぎた!)

このデリーコーナーは二つの右複合コーナーである。元は一つだったが事故があり、安全性向上の為改修された。

(第一に気を取られて第二も失敗した! これじゃあヘアピンまでに速度乗らない!)

第二デリーコーナーを抜けると少しのストレートと110Rという高速コーナーの後、このコースで一番低速になるコーナーの一つ、左のヘアピンへ侵入する。ここから反時計回りになり、後半は全開区間が長い高速セクションへ入って行いく。

(第一セクターの相手のタイムどうだったっけ? ってそんな事考えてる場合じゃない! ここの立ち上がりは失敗出来ない!)

ヘアピンを立ち上がると200Rという緩い右コーナーだが長い全開区間であり、ヘアピンの処理を失敗すると致命傷になりかねない。

(なんとかなったけど、もっと速度乗せられた筈)

この全開区間の終わりは左複合コーナー、通称スプーンコーナーである。スプーンに形状が似ているからと名付けられたこのコーナー、中途半端な減速で侵入する為コースアウトしやすく、しかし減速しすぎるとこのコース最長であるバックストレートで速度が乗らない。

(ここも慎重かつ大胆に! コース幅を生かして!)

四・五・六速とリズム良くシフトアップしていき、このコースのハイライト、世界最難関の左超高速コーナー、130Rへ突っ込んで行く

(中盤でミスったのが痛かった、多分このままじゃ通過出来ない。ここは一か八か!)

とあるトップドライバー曰く――ここは玉手箱だ。前半で失敗しても、ここの最速ラインを寸分の狂い無く、全開でクリア出来れば0.5秒は削れ、前半のミスを帳消しにできる――

(でも少しでも外したら即クラッシュ、それでもやらないと。じゃないと…… 予備予選なんかで終わらせない!)

コーナー手前に目安の距離計が見えてくる。

(ここ!)

絶妙なタイミングで左にステアリングを切り込み、マシンが鋭く曲がって行く

(どんぴしゃ!)

遠心力で車体が外へ行こうとするがコース幅を上手く使いそれを消していく

(これ以上無い出来! あ、でも最終の立ち上がりも気をつけないと!)

残すはシケイン、スポンサーの看板を目印に急減速、最終コーナー、そしてメインストレートへ向けて全開で立ち上がって行く。

「タイムは!?」

コントロールラインを通過した直後、マシンから無線が飛んだ。


光がコントロールラインを通過し、第二コーナーを立ち上がったところで制限時間となった。各車、この周が最後だ。

「1.51.462です! 0.01差で暫定二位となります!」

「完全なクリアラップだったな。後は他チームだが」

他のマシンも続々アタックを終える。

「おめでとう! 無事、予備予選突破だ!」

監督が他のメンバーに向けてサムズアップしながら無線で光をねぎらう。

「ありがとうございます!」

結局、他チームは俺達のタイムを抜けず、二位だったチームは呆然としていた。俺達は見事、予備予選突破と相成った!

計算面倒なのでタイムは基本曖昧です。返信でも書きましたがラップタイム表がうまくいかない・・・

予備予選ってのもあってあまり熱く書いてはいません。コース紹介も兼ねてますし。尤も、コース上でバトルはあまり書く予定無いので今後もこんな感じかも?

ちなみにタイムの参考は性能がL○P2ほぼ同じらしいGT50○です。

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