8thスティント
「なあお前ら、レース出るんだって?」
月曜日、登校し教室に入るとクラスの中で話題になっていた。まあ部室でエンジン掛けたり丸裸でトランポに載せてテスト場所行ったりしてれば嫌でも目に付くからな。
「うん、出るよ。エントリーも済ませた」
「マジか! 何時だよ」
「八月中旬、伊勢湾サーキットである伊勢1,000kmレースよ!」
親指を立てながら光がドヤ顔で言う。
「予備予選、いや、車検すら通るか分からないのに……」
「野暮な事言わないの、その位の気概がないと通るものも通らないわよ」
まあそうだが……
「テレビでやるのか? やるなら観るぞ」
「いや、確か何時も夜中にダイジェストじゃなかったかな? 耐久だから時間かかるし。衛星なら全部やってるはずけど」
半日使うから専門チャンネルじゃないとな。
「ってだからその本戦に出れるかどうかはまだだって」
「皆席に着けー」
あ、予鈴鳴ってたんだ。
「ま、楽しみにしてるよ」
クラスメイトからそう言われ前を向く。
身時かな人も観るかもしれないんだよな、地味にプレッシャーだ……
「来週から期末試験だ。よって試験期間に入る今日から部活は無しだ。バイトもするんじゃないぞー」
部活が再開されるのは二週間後だ、動かさない期間が長くても車は不調になるんだが、こればかりは仕方ない。まあどうせ整備もしないといけないからあまり気にしなくてもいいかな?
「義正、試験どうだった?」
「数学と理科だけだな90超えたのは。他はそこそこだ」
「う、流石、数学はそこそこだけど他はギリだったわ……」
ドライバーは英語出来ないと駄目なんじゃあ……
「おれは殆どのやつで赤点+αだったぜ!」
それ自慢じゃねえ!
「赤点が駄目なんだろ? 逆に言えば赤点じゃなかったら問題無い!」
いやいや本田、それは違うだろ!
「そうよね! そこまでなら大丈夫って事だもんね!」
え? 俺が間違ってるのか?
「で、試験終わったんだから今日から再開するんでしょ?」
今日で全ての答案用紙が返ってきた。そしてこの後の終業式を終えると部活再開だ!
「おうそうだ言い忘れてた。お前ら、今日は職員会議があるから部活は明日からだぞ。じゃ」
……あれ?
昨日は出端を挫かれたが今日から部活再開だ。
「さて皆さん、岡山以来の集合となりましたが、今日からは其の時結果を元に改良すると云う事でよろしいでしょうか?」
「「意義無し」」
部長の言葉に皆が頷く。というよりもそれしか無いし。
「では野水さん、あの時のデーターを出していただいでよろしいでしょうか?」
野水がPCを取り出し、それを視ようと皆で集まる。ちょっと暑い
「実は試験期間中にこっそり家でやってたんだよねー」
おい!
「で、これなんだけど、皆も大体想像付くと思うけど問題山積みだよ。この前言ってたように振動、燃費、あと温度の上昇もこれは早いんだって、他にも色々と」
改めて見ると我ながら酷いな、どっから手を付けよう……
「ねえ、これはアクセル開度? あたしこんなに踏めてなかったんだ」
それでもあの二人は空力によったらもっと踏めるって言ってたな。
プロってすげー
「……カナードの準備工事だけしておく?」
「その方がいいかもしれねえな。ただカーボンだから下手に穴開けると割れるぞ」
「では由良さん、本田君、二種類造ってはどうでしょう? 聞くところによると実際何種類か造っているチームもあるようですし。それにそれは後で何とかなる問題ですから、まずは壊れないようにしましょう」
「最初クランク細いからすぐヘタってたけど、この振動はそれ以外も原因ってこと? あれ確か森君交換してたしよね」
「あ、うん。」
でも何処だ? そんな少し走っただけでこんなになるって
「……精度が悪かった?」
「いや、本田のは問題無い筈。俺も最初測ってみたけどばっちりだった、流石プロ」
部品精度が問題無いとすれば考えられるのは設計しかない
「なあそういえば造ってる時に一カ所気になった所があったんだけどよ」
気になった点?
「クランクケースの結合部削ってねーか?」
あ、あれか!
「これのこと?」
野水が図面を展開させ、皆の視線が集まる
「確かに一カ所だけありませんね」
「本当だ、何でこんな事になってるの?」
光がこっちに顔を覗きながら見てくる、近い!
「そこは削らないと他と干渉するんだ」
「だからって何も削ることないじゃない!」
だって他にすぐ思いつく方法無かったんだよ!
「必要だからあるのに、勝手に削ったらそりゃ駄目だろう。おれもやる前に指摘すればよかったか?」
いや、指摘されてもそんな時間無かったと思いますです、はい。
「まあもう造ってしまっていますし、今からでは間に合わないでしょうから今回はこのままいきましょう」
はい、すいません……
野水が当該箇所を指しながら
「でも何で削ったの? ここに負担かかるって誰でもわかるよ?」
ごもっとも
「前に読んだ本で、同じように干渉部削ったエンジンを見たんだ。ちなみに赤い跳ね馬のあれね」
「おれも読んだ事あるかも、ただあれって欠陥について書いてあったんだろ?」
まあそうなんだけど
「その書いてあった走行距離からすると、一レース位なら大丈夫かなと、どうせ毎回オーバホールするんだし」
「……負荷が違う」
う……
「しかし今後の事を考えるとこのままではいけませんね。先ほど申し上げたように今回はこのままとして、この状態で完走を目指しましょう」
いや、だから車検と予備予選が
晩飯の買い物をして帰宅。そうそう、両親共働きだから俺も家事してる。因に弁当も自作だ。前日の残り入れるだけなんだけど
「振動? え? 結合部削ったの? それは……」
早速親に相談した。すると返って来た言葉は——あんな真似しちゃいけません!・設計し直すしかない——だった
「この前は中まで詳しく見なかったからね、観ておけば指摘したのに」
現像打つ手無しとのこと。いや、あるにはあるがとんでもなく荒療治なことしかないとのこ
その元ネタは水平V12だろ!って突っ込みは無しで
ラップタイム表どうしよう・・・