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セシルs・メモリー  作者: 竜司
後編
8/10

発覚



 第八章 発覚


 7月9日 木曜日

 今日はすごい話を聞きました。この前亡くなった鬼頭火山と、私のクラスの隣の席の人が暗号勝負を繰り広げているらしいのです。既に出題者が死んでいるなんて、ワクワクしますね。彼の名前は外崎暁。顔はミスチルの桜井さんと、和田アキ子さんを足して3で割ったような感じで、かわいいです。

 彼とその友達の篠原亜美さんとと二人で挑んでいるとのことです。どういう関係なんでしょうね、あの二人は。なんだか考えているとムズムズするのはどうしてでしょうか。

 暗号を解いたあかつきには鬼頭火山が小説家を辞めようとしていた理由が明かされるとか。私は週刊誌で読んだのですが、鬼頭火山はどうも精神的に追い詰められていたとかなんとかで、大した結末ではないと思われます。

 ところで竜司君は亜美さんのことが好きなようです。お似合いです。絶対に応援すると心に決めました。

 ぴーえす。セルパスマードの凱旋もう読み終わりそう!犯人は野毛無のげむさんだと思う!


 肌色のショーツを鼻に押し付け、すぅーっと吸い込んでは、神宮正信じんぐうまさのぶは恍惚感を味わった。右手には赤ピンク色の小さな日記帳が開いて持たれていた。日記の内容を何度も読み返していると、部屋の窓の外から車が近付いてくる音がして、近くで鎮まった。神宮はショーツをタンスに、日記を引き出しに戻してから階下のリビングへと急ぎ降り、ソファに腰を下ろし呼吸を整える。ずっとそこに居ましたよと言わんばかりの無表情で、持参した倫理の参考書に目を落とし、待機した。

 玄関が開く音、若い声、足音、買い物袋の擦れる音。リビングのドアが開かれ、黒いストレートの髪が揺れるのを目の端で捉える。母親の次に入室した二宮光にのみやひかりは神宮に目を遣ると、まさ君エブリイバーガー食べますかぁと尋ねた。神宮は顔だけ参考書から離し要らないと短く伝え、すぐに参考書に顔を戻した。

 神宮と光は一歳差の三従姉弟みいとこの関係にあった。神宮の父と光の父が仕事の関係で仲が良く、付き合いがあった。なにより神宮は中学三年生の頃から現在の高校一年生まで全国模試の一位を譲らない有名人であった。今日のように偶に訪問した際には光に勉強を教えている。その度に隙を見て光の下着や衣服を凌辱したり、日記を盗み見るのが神宮の癖であった。

 夜八時、父同士の用事があと一時間ほどで終わりそうだとのことで、それまで光に勉強を教える次第となった。光はすぐに飽きてしまうので、十五分もしないで読書の感想を聞きながら、神宮は参考書を読むこととなる。今回も子供を相手にするだけかと溜息を小さく吐くと、王里神会というワードが耳に残った。神宮は聞き返した。光は回転椅子を回し神宮の方へ向いた。

「宗教に入ったってお父さんに聞きましたよぉ~」

 入信理由、活動内容など興味本位の質問に適当に答えながら、神宮は光の日記の内容を思い起こしていた。神宮は入信して日も浅いが、能力を買われて既に幹部候補生であった。鬼頭火山の情報は入ってきている。鬼頭火山の居場所の特定は、現在の王里神会にとって最重要課題の内の一つだ。まさかこの光から鬼頭の鱗片が垣間見れるとは思っていなかった神宮であるが、実は葛藤していた。この情報を上に渡せば光に更に詰め寄る必要があり、それは不本意だった。光を巻き込みたくない自分がいる。だが報告せねば――Kの仮面が、言葉が脳裏に過る。拝謁はいえつを済ませたときから、神宮はKに心を掴まれたままだ。

 それから数日後、王里神会は外崎暁と篠原亜美をV事件の重要参考人と認定した。
















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