第二十一章 魔王との対話
ザルヴァドールは、戦場の中央に立っていた。
周囲には、倒れた兵士たち——人間も、魔族も——の姿がある。
「来たか」
ザルヴァドールは、創太を見た。
「ああ」
創太は、彼の前に立った。
「話をしよう」
「話? 今更、何を」
「戦争を、終わらせる方法だ」
「……」
ザルヴァドールの目が、わずかに揺れた。
「お前は——まだ、そんなことを」
「諦めないからな」
創太は微笑んだ。
「俺は店長だ。客を満足させるまで、仕事は終わらない」
「……」
長い沈黙が流れた。
やがて、ザルヴァドールが口を開いた。
「お前に、聞きたいことがある」
「何だ」
「なぜ——お前は、私を恐れない」
「恐れてるさ」
創太は正直に答えた。
「でも——恐れているからって、逃げるわけにはいかない」
「なぜだ」
「守りたい人がいるからだ」
「……」
「この集落の人たち。リーナ、カイル、みんな——俺の大切な客だ」
創太は真っすぐにザルヴァドールを見つめた。
「客を守るのは、店長の仕事だ」
「……」
ザルヴァドールは、黙って創太を見ていた。
やがて——
「お前は、本当に不思議な男だ」
「よく言われる」
「千五百年生きてきたが——お前のような人間は、初めてだ」
ザルヴァドールの声には、どこか疲れが滲んでいた。
「私は——疲れた」
「……」
「千五百年間、憎しみ続けた。復讐を誓い続けた。でも——」
彼は空を見上げた。
「何も、変わらなかった」
「……」
「人間を殺しても、憎しみは消えない。復讐しても、仲間は戻らない」
ザルヴァドールの目から、一筋の涙が流れた。
「私は——どうすればいいのだ」
創太は、一歩前に出た。
「簡単だ」
「……何?」
「やめればいい」
「やめる?」
「戦争を、憎しみを、復讐を——全部、やめればいい」
「そんな簡単に——」
「簡単じゃないさ」
創太は認めた。
「でも——できないわけじゃない」
「……」
「お前が変われば——世界も変わる」
創太は手を差し伸べた。
「一緒に、やり直そう」
ザルヴァドールは、その手を見つめていた。
震える手を——
ゆっくりと、伸ばした。
そして——
「……わかった」
握り返した。
その瞬間——戦場に、静寂が訪れた。




