第十八章 最終発注
魔王軍との最終決戦が、近づいていた。
カイルの情報によると、魔王軍は再編成を終え、大規模な攻勢に出る準備をしているという。
「今度は、本気で来る」
カイルは険しい顔で言った。
「先遣部隊じゃない。主力軍だ」
「数は?」
「三万」
「……」
創太は黙り込んだ。
三万。この集落の人口の百倍。
「勝ち目は、あるのか」
「正面からぶつかれば、ない」
カイルは正直に答えた。
「でも——」
彼の目が光った。
「お前のやり方なら、可能性はある」
「俺のやり方?」
「情報戦。補給戦。そして——人の心を動かすこと」
カイルは地図を広げた。
「魔王軍は強大だ。しかし、一枚岩ではない」
「どういう意味だ」
「魔王に従っている者の中には、本心から従っているわけではない者もいる。恐怖で縛られているだけの者、強制的に徴兵された者——」
「彼らの心を動かせば——」
「軍の結束が揺らぐ」
創太は頷いた。
「やってみる価値はあるな」
「ああ。そして——」
カイルは創太を見つめた。
「最も重要なのは、魔王自身だ」
「ザルヴァドール?」
「お前は、彼と対話した。彼の心に、変化を与えた」
「……」
「もし——もし魔王自身を説得できれば——」
「戦争が終わる」
創太は呟いた。
「でも、そんなことが——」
「わからない。でも——」
カイルは微笑んだ。
「お前なら、できるかもしれない」
創太は深呼吸をした。
「……わかった。やってみよう」
そして——発注端末を手に取った。
「マネージャー」
『はい、店長』
「最後の発注をする」
『……わかりました』
創太は、端末に向かった。
今まで発注したことのないものを——発注する。
「食料、水、医薬品——それから——」
創太は目を閉じた。
「希望」
『……希望、ですか』
「ああ。形にならないものだけど——」
創太は端末を握りしめた。
「みんなが必要としているものだ」
『……承知しました』
発注ボタンを押す。
「送信完了」
画面に表示された。
「……」
創太は窓の外を見た。
明日——何が届くのだろう。
そして——
「届いたものを、みんなに配ろう」
創太は呟いた。
「それが、最後の仕事だ」
夜が、静かに更けていった。




