第十七章 勇者とは何か
マネージャーの告白から、数日が経った。
創太は、その間ずっと考えていた。
勇者。
自分は、本当に「勇者」なのだろうか。
「店長、どうした?」
リーナが、心配そうに声をかけた。
「いや、何でもない」
「嘘だ。顔色が悪い」
「……」
創太は黙り込んだ。
リーナは創太の隣に座った。
「話してくれ。何を考えている」
「……」
創太は深呼吸をして、話し始めた。
「俺は、勇者なんかじゃない」
「勇者?」
「マネージャーに言われたんだ。俺が『勇者』だって」
「……」
「でも、俺には何もない。剣も使えない。魔法も使えない。戦闘能力なんて、ゼロだ」
「……」
「本当の勇者は、お前やカイルみたいな奴だ。俺は——」
「馬鹿なことを言うな」
リーナが遮った。
「え?」
「勇者は、剣を振るう者だけじゃない」
リーナは創太を見つめた。
「あんたは、剣で敵を倒さなかった。でも——」
「食事で人を生かした。物流で社会を繋いだ。知識で未来を切り開いた」
「……」
「それは、剣より強い。魔法より尊い」
リーナの目には、真剣な光が宿っていた。
「あんたは——私たちの勇者だ」
「……」
創太は言葉を失った。
「私は、村を滅ぼされた。家族を失った。復讐だけを考えていた」
リーナは続けた。
「でも、あんたに出会って変わった。復讐じゃなくて、守ることを考えるようになった」
「……」
「それは、あんたのおかげだ。あんたが——私を救ってくれた」
創太は目を閉じた。
胸の奥に、温かいものが広がっていく。
「……ありがとう、リーナ」
「礼を言うのは、私の方だ」
リーナは微笑んだ。
「だから——」
「自分を卑下するな。あんたは、勇者だ。誰が何と言おうと、私たちにとって——あんたは、最高の勇者だ」
創太は、その言葉を噛みしめた。
勇者とは何か。
剣を振るうことだけが、勇気ではない。
人を救うこと。希望を与えること。絶望の中で、立ち上がり続けること。
それも——勇気だ。
「……そうか」
創太は立ち上がった。
「俺は、勇者か」
「ああ」
「なら——」
創太は窓の外を見た。
「勇者らしく、やることをやろう」
リーナは微笑んだ。
「それでこそ、だ」
二人は、並んで歩き出した。
戦いは、まだ終わっていない。
しかし——希望は、確かにあった。




