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吸血鬼は人間の君に何度も恋をする  作者: 黒姫 百合


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きっと天音は『遠慮』を子宮に置いてきて生まれてきたのだろう

「そう言えば言い忘れていたことだが、今日は我のおごりだ。好きなものを頼むが良い」

「おぉ~、太っ腹~」

「なぜそう言いながらお前は我の腹をつまむんだ。この体を気安く触って良いのは静江と静香だけだ」

「はひ、ごめんなしゃい」


 奢りと聞いて一番テンションを上げたのは言うまでもなく、天音だ。

 天音がメアリ―の腹をつまみながら茶化すと、かなり不快だったらしく天音の頬を横に引っ張る。


 結構痛いのか少し涙目を浮かべながら天音はメアリーに謝罪した。


「さすがに初対面の人にいきなり奢ってもらうのは悪いです。自分の分は自分で払います」

「そんなに畏まるな。三百年ぶりに静江の生まれ変わりに会えたんだ。そのお祝いをさせてくれ」

「そうだーそうだー。メアリーの言う通り、ここは大人しく奢られろー」

「なんで天音がそんなに上から目線なんですかっ」

「っていうか私、静江さんの生まれ変わりじゃないから。帆波ちゃんもスルーしないで」


 帆波の言う通り、静香も初対面の人に奢ってもらうと言われたら嬉しいという気持ちよりも先に負い目を感じてしまう。


 しかし、メアリーは静香たちに奢りたいらしく、奢る気満々である。帆波に怒られる。


 というか静香は静江の生まれ変わりではない。

 そして、帆波が静江の生まれ変わり発言をスルーしたことに、少しだけショックを受けた。


「……すみません」


 静香の言葉に冷静さを取り戻した帆波は、静香にだけ聞こえるぐらい小さな声で謝罪した。


「奢ってもらえるなら高い物を頼も~」

「どんどん頼め。そっちの女の子も遠慮せずに頼んで良いからな」

「……はい、ありがとうございます」


 奢られる気満々の天音はなんの遠慮もせずに高い物を頼む気満々である。

 きっと天音は『遠慮』を子宮に置いてきて生まれてきたのだろう。


 メアリ―はさっきからほとんど話していない月にも気にかけ話しかける。


 人見知りが激しい月は、俯いたまま返事を返す。


 さっきから話に参加してなかった月を気にかけるメアリーを見て、ほんの少しだけ静香の中でメアリーの評価が上がった。


 その後、店員に各自デザートとドリンクバーとみんなでつまむ用のフライドポテトを注文した。


「注文を終わったことだしドリンクを持ってくるが、静香はなにが飲みたい?」

「う~ん……それじゃーオレンジジュースをお願いします」

「私はメロンソーダ」

「お前は通路側なんだから運ぶのを手伝え。月も手伝ってはくれないか。さすがに一人で五人分は運べん」

「あっ……はい。分かりました」

「ぶーぶー、メアリーは人使いが荒い」

「とっとと行くぞ天音。静香と帆波はそこで待っていてくれたまえ」


 静香に尽くしたいメアリーは静香に献身的になる。


 初対面の人にそこまで尽くされることに若干の抵抗感と申し訳なさを感じたが、一番奥の席に座っているので、ありがたく好意を受け取った。


 わざわざ、奥の席の人がジュースを持ってくるよりも通路側の人が持ってくる方が合理的だ。


 面倒くさがりの天音はメアリーにジュースを持ってこさせようとしたが、一蹴され文句を垂れている。


 メアリーは月にもお手伝いを頼み、ジュースを取りに行く。


 月は人見知りなので、物凄くメアリ―に畏縮していた。


「メアリーさん、思ってたほど話が通じない人ではなかったですね」


 メアリ―が離れたのを確認して、帆波が口を開く。


「そうだね。でも朝はかなり酷かったんだよ。私の話全然聞いてくれないし」


 なにがあったのか分からないが、今のメアリーは朝と比べてかなり物分かりが良くなっている。


 朝のメアリーは『お前は静江の生まれ変わりだ』の一点張りで静香の話を聞こうとしなかった。


「静香と同じでメアリーさんも冷静になったんでしょう。朝のメアリーさんがどうだったのか私は詳しくは知りませんが、今のメアリーさんからは少し余裕が見えます」


 ドリンクバーのところにいるメアリーの方を見ると天音となにか言い争いをしていた。


 きっと、また天音が変なことをメアリーに言ったのだろう。

 それを仲裁することもできず、月はただあたふたしていた。


 確かに、朝の時と比べて今のメアリーからは切羽詰まった感はないように見える。


「それに静香を静江さんと勘違いしていることを除けばメアリーさんは悪い人ではなさそうですね」


 悪い人ではない。


 それが実際メアリーに会って思った帆波の感想だった。


 確かにメアリーは静香を静江と勘違いしていること以外はまともだし、話も通じる。


「私を静江さんと勘違いしていること以外は普通に話が通じるし、帆波ちゃんの言うとおり悪い人ではないのかも。朝の時よりも冷静だし、受け答えができるし」


 朝の時は混乱していたせいか、メアリ―と全く話が通じなかった。


 しかし、今のメアリ―は大分落ち着いたらしく、話も通じるし危害を加えるような感じもしない。


 静香の中でメアリ―は悪い人ではないと考えを改め始めた。


「よほど似ていたのですね。静香と静江さんは。メアリ―さんが冷静さを失うぐらい」

「そんなに似てるのかな~。全然ピンとはこないけど」


 当たり前だが静香は静江に会ったことがないから静江がどんな容姿をしているのか分からない。


 メアリー曰く、静香に似ているらしいが静香自身全くピンと来ないので、首を軽く傾げる。

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