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吸血鬼は人間の君に何度も恋をする  作者: 黒姫 百合


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初めてのお泊り会

「ならそれを月に伝えよう三人で。きっと私たちの思いは届くから」

「……っていうかどうして天音はそんなに冷静で大人なんですか。そんな保証どこにもないでしょ」


 天音の言葉に静香が不安をぶつける。


 どうして天音はそんなにも冷静でいられるのか静香も疑問に思った。


「だって二人とも言ってたでしょ。月とずっと友達でいたい。月は大事な友達だって。なら月だってそう思っていると思うよ。私も静香も帆波も月も大事な人間の友達だから」

「なにそれ天音ちゃん。人間の友達って」

「なんか天音が素直にそんなこと言うと逆に調子が狂っちゃいますね」


 天音の言葉が心に優しく染みる。

 こんなにも天音に安心したのは初めてかもしれない。


 でも静香は『人間の友達』という表現が引っ掛かり思わず笑ってしまう。


 一方帆波は天音に友達と言われて照れている。


 傍から見ていると天音に対して天邪鬼な帆波は一周回って可愛い。


「だから今日は寝て体力を回復させよう~。今、布団敷くから待っててね~」


 さっきまでの大人モードの天音が幻影だったかのように霧散し、いつもの天音の調子に戻る。


 その後、部屋主の天音が三人分の布団を敷く。


「……人間という生き物もまた面倒な生き物だな。でもそれが面白い。特に高校生は子供から大人に移り変わる時期だからなおさら。だから私は人間に溶け込むことを止められないのだな」

「天音ちゃん、なにブツブツ言ってるの?」

「別になにも言ってないよ~。帆波の弱った姿が可愛くてスマホで動画保存しておけば良かった~と思ってただけ」

「そんなことしたらスマホ水没させますよ」


 布団を敷いている時、天音がなにか言っていたが声が小さくて静香は聞き取ることができなかった。

 天音がなにを言っていたのか気になった静香は聞き返すといつものふんわりとした声ではぐらかされてしまった。


 息をするように帆波をからかう天音に帆波はいつものように睨む。


 さっきまでの湿っぽい空気はどこに行ったのか。


 いつも通りの空気が戻り、静香にも笑顔が戻っていた。




 一つの部屋で三人が川の字で寝ている。

 ジャンケンの結果、右から天音、静香、帆波の順で寝ることになった。


 真ん中は二人に挟まれているから、右を向いても左を向いてもどちらかの顔か頭が見えるから少しだけ落ち着かない。


「どうしたんですか静香。さっきから落ち着きがありませんね」

「だって右を向くと天音ちゃんの顔があるし、左を向くと帆波ちゃんの顔があるんだもん。なんかいつも一人で寝てるから近くに友達の顔があるとなんか緊張しちゃうし、初めて寝顔を見られるから少しだけ恥ずかしい」


 布団の中で右を向いたり左を向いたりしている静香が気になった帆波は静香に話しかける。


 いつもと違って今夜はどっちを向いても友達がいる。


 それに帆波と天音には初めて寝顔を見られるということもあり、少しだけ恥ずかしかった。


「……それを言われると私も少しだけ恥ずかしくなってきましたね。寝顔を見られるのは」


 帆波も意識し始めて、照れ始める。


「うぅ~、照れてる帆波が見たいのに、ここからだと遠い」

「そんなの見なくて良いですからっ」


 照れてる帆波を見ようとする天音に恥ずかしそうに嫌がる帆波。

 ノリは修学旅行の夜のようだった。


「というか仰向けで寝れば良いんじゃないですか」

「帆波の言うとおりだね~。仰向けに寝たらみんな同じく天井見てるから寝顔なんて気にならないと思うよ~」


 帆波と天音が正論を言う。

 確かに仰向けで寝れば、どっちの方向を見て寝るか考えなくても済む。


「私、仰向けで寝るのが苦手だからうつ伏せで顔を右か左に向けないと寝れないの」

「「……えっ……」」


 静香は仰向けで寝るのが苦手だった。

 仰向けで寝ると背中がスースーしたり、胸の圧迫感がなくてなんだか寝れないのだ。


 まさか仰向けで寝れない人がいるとは思わなかった帆波と天音は絶句した。


「まさか仰向けで寝れない人がいるなんて初めて知りました」

「だからずっとうつ伏せで寝てたんだね。納得納得」

「昔から仰向けで寝るのが苦手だったんだよね~」


 仰向けで寝れない人に驚く帆波に、ずっとうつ伏せで寝ている理由が判明して納得する天音。


 理由は分からないが静香は昔から仰向けで寝るのが苦手だった。


「まっ、好きな方向向いて寝たら良いと思うよ~。基本、どっちを向いて寝てるの~」

「基本は右かな」

「これは私の方が帆波よりも大好きって意味だね。私、静香の右側にいるしっ」

「だから、いつも右見て寝てるだけで他意はないよ」

「全く静香が困ってるじゃないですか……静香も真に受けないでください」


 左右、どっちを向いて寝れないならいつも寝ている方向を向いて寝るのが良いと天音は提案する。


 それは良い案だと思い、右を向くと天音が静香をからかってくる。


 別にそんなつもりがなかった静香は少し慌てふためきながら弁明し、静香をからかう天音に帆波が呆れていた。


「静香も帆波もからかったことだし、もう寝ようか」

「そうですね。私も眠くなってきました」

「うん。私もそろそろ眠いかも」


 気づけば夜の十二時を超えていた。


 どおりで眠いわけだ。


 天音の言うとおり、もう寝よう。


 帆波も眠そうだし、静香も眠い。


「おやすみ~」

「おやすみなさい」

「二人ともおやすみ……」


 三人はそれぞれおやすみを言って眠りにつく。


 初めてのお泊り会。


 まるで修学旅行の夜のような高揚感はあったが睡魔には勝てなかった。


 でも、夜も友達と一緒にいるという非日常感は、とても楽しかった。

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