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吸血鬼は人間の君に何度も恋をする  作者: 黒姫 百合


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3/22

次生まれ変わっても、あなたのつがいになりたいです

 約三百年前静江が死んだ時、メアリ―も静江の後を追おうと死のうとした。

 しかし、不老不死のメアリ―は死ぬこともできなかった。


『次生まれ変わっても、あなたのつがいになりたいです』


『生まれ変わってもまた私を見つけてくださいね」


『私を身請けしてありがとうございます』


『私はあなたのことを一生愛しています』


 死ぬことができないメアリ―にとって、静江との約束だけが生きる希望だった。

 今でも静江の顔、声、匂い、体温の温かさ、柔らかさも昨日のことのように思い出すことができる。


 そして今日、約三百年ぶりに静江に会えたメアリ―は心がはち切れるほど歓喜した。


 しかし静江の生まれ変わりである静香はなにも覚えておらず、他人行儀だった。


 それが悲しかった。


 生まれ変わってもつがいになると愛を誓い合った静江はもうそこにはいなかった。


「……静江……もう一度、君に……会いたいよ……」


 メアリーの嘆きは誰にも届かず虚空へと消えていき、メアリ―の心にはもどかしさだけが沈殿した。




 こんなにも学校の中が安心だと思ったのは生まれて初めてかもしれない。

 さすがにあの自称吸血鬼女も学校の中までは入ってこないだろう。


 学校の廊下を歩きながら静香は安堵し、息を整える。

 全速力で走ったせいで脚は乳酸が溜まってパンパンだ。


「おはよう~」

「おはようございます。どうしたんですか。なにかあったんですか」


 静香の声に覇気がないことに気づいた帆波が静香を気にかける。


「もしかして漏れそうだったとか~」

「だったら普通、コンビニとか入るでしょ。というかむしろ急いで来れないでしょ」

「だよね~。ごめんね~、変なこと言って~」

「だ、大丈夫静香ちゃん。息が荒いから深呼吸した方が良いと思うよ」


 下品なことを言う天音に帆波はマジレスする。

 帆波の言う通り、漏れそうだったら普通にコンビニのトイレを借りるし、走るのは逆効果だ。


 帆波に指摘され納得した天音は静香に下品なことを言ったことを軽い口調で謝罪した。


 唯一、女の子のルナは静香の背中をさすりながら心配する。


 この三人が高校に入学してできた静香の友達だ。


 まず一人目は、真面目で堅物な男の娘、白川帆波だ。

 身長は百六十半ば。

 黒髪のボブカットをしており目つきもキリっとしていて鋭い。

 しかし視力が悪いらしく、眼鏡をかけている。

 真面目過ぎて口うるさいのが玉に瑕である。

 スキンケアやヘアーケアには余念がなく、肌も髪もツルスベである。


 二人目は、マイペースでつかみどころがない男の娘、緑川天音である。

 身長は百四十半ばとこの四人の中では一番小さい。

 地毛らしくまるで草原のように美しい薄い緑色をしている。

 くっせ毛らしく、髪はウェーブがかかっておりそれはそれで可愛らしい。

 帆波とは違う目は垂れていて柔らかい印象を与える。

 いつもは子供っぽいのだが、時々高校二年生とは思えないほど大人っぽい雰囲気を醸し出す時がある。

 つかみどころがない男の娘である。


 最後はこのグループで唯一の女の子である日下月ルナである。

 月は引っ込み思案な性格で、そのせいで女の子のグループとは波長が合わず静香たちと基本、行動している。

 身長は百五十半ばと静香とほとんど変わらない。

 若干、静香の方が高いぐらいである。

 黒髪のセミロングで、目は丸くて可愛らしい。

 基本人見知りだが、一度友達になった人には距離感が近くなるらしくよく話すようになる。


 以上三人が静香のいつもいるメンバー、イツメンである。


「ありがとう月ちゃん。今朝ね、変な女性に声をかけられたんだ」

「変な女性?」

「うん」


 心配してくれる月に感謝しつつ、静香は今朝会った変な女性の話をする。

 特に月は静香が会った変な女性が気になるらしく、静香の話に食いつく。


「……それは変質者ではないか」

「あっ、それは私も思った~。絶対ヤバい人だよ~」

「今朝から大変だったね静香ちゃん。でも無事で良かったよ」


 帆波は朝から知らない女性に絡まれた静香を労わるかのように呟き、天音は帆波に軽い調子で同調する。


 月は誰よりも静香の身を案じ、無事な静香に安堵する。


 月は心優しい女の子だ。


「うん、無事逃げられて良かった~。必死に逃げたせいで朝から汗だぐだぐだよ~」

「無事なのは良かったですが、続くようでしたら一度警察に相談した方が良いと思います。なにか遭ったらでは遅いので」


 朝から必死に走ったせいで体中汗でベトベトして気持ち悪い。


 帆波も無事な静香に安堵しつつ、適切なアドバイスをする。


「そうだね。続くようだったら相談してみるよ」


 帆波の言っていることは正しいのだが、警察に相談するのは最終手段にしたい。


 理由はシンプルで、面倒くさいしそれになんの証拠もないため警察も動いてくれない可能性が高い。

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