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吸血鬼は人間の君に何度も恋をする  作者: 黒姫 百合


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男の娘はみんな女の子のおっぱいが大好きだからね~

「私たちの高校は制服ですからね。諦めてください」

「そうだな。でも初めて着る服だからなんだか楽しいな。七百年以上生きて来て初めて着た服だ」


 静香たちが通う高校は制服登校が基本のため、そこは諦めてもらうしかない。


 メアリーもそれ以上我がままを言うつもりはないらしく、キツキツで大変らしいが初めて着る制服に喜びを感じていた。


「初めての高校生だからな。精一杯楽しみたい」


 真新しい制服を着て無邪気に喜んでいるメアリーはまさに女子高生のようだった。


「だが、ホントは静香と同じ制服が良かったんだが、残念だ」

「それは仕方ないですよ。男女で制服って基本違いますし」

「そういうものなのか。できれば静香とお揃いの制服で高校に通いたかった」


 初めて制服を着て喜んでいるメアリーだったが、唯一静香とお揃いの制服ではないことに不満を感じているらしい。


 でもそれはしょうがないことだ。


 基本、どの学校でも男女で制服は違くなる。


 でもメアリーの言っていることとは少し違うかもしれないがメアリーの言うことも一理ある。


 男女共にブレザーやセーラー服、スラックスとスカートとどっちも選べたら最高だっただろう。


 気分によって服装を変えられるのは楽しい。


 その時、メアリーと着物を着て歩く光景が頭に一瞬だけよぎる。


 あれはなんの映像だったのだろう。


 あまりにも一瞬だったせいで、鮮明には覚えていないがなんだか懐かしい気持ちになった。


 全く、記憶にはない光景だったのに。


「どうした静香。具合でも悪いのか」

「ううん、大丈夫です。気にしないでください」


 急に俯いた静香を心配するメアリー。


 最初は頭のおかしい人だと思っていたが、結構察しの良い女性らしい。


 これ以上心配されたくなかった静香は無理矢理その話題を終わらせる。


「そう言って前は死んだのだろう。我に心配をかけたくないからと言って黙って、笑みばかり浮かべて、大丈夫だと言い張って……すまない。また静江と重ねてしまって」

「いえ……気づいたなら大丈夫です」


 昔のトラウマに触れたのだろう。メアリーの口調がきつい。

 静香の肩を掴んでいるメアリーの手にも力が入り、少しだけ痛い。


 途中で目の前にいる人が静江ではなく静香と気づいたメアリーは徐々に冷静さを取り戻し、また静香のことを静江と重ねてしまったことを謝罪する。


 静香は静香であって静江ではないと否定したかったが、今回は途中で気づいたのでなにも言わなかった。


 それに本気でメアリーが心配していたので、そんなこと言える雰囲気でもなかった。


 二人の間に重い空気が立ち込めある。


「おっはよー。なになになんか空気が重いねー。もしかしてこれが噂の倦怠期」

「なにを馬鹿なことを言っているんだ天音は。我と静香は付き合っておらんぞ」

「天音ちゃん、変なこと言わないで」

「ジョークだよジョーク。天音ちゃんジョーク」


 いつ背後に来たのか分からないが、静香たちの背後から声をかける天音。

 いつも通り、会って早々変なことを言う天音にメアリーも静香も辟易する。


 こういう時、天音の能天気さは羨ましい。


 メアリ―にマジレスされた天音はおどけている。


 でも天音のおかげで空気が軽くなったのは事実だ。


「天音は良いな。男子だから静香と同じ制服を着られて」

「だったら制服交換してみるって言いたいけどメアリーでは私の制服は入らないと思うから無理だね~」

「確かに。我と天音では身長差があるからな」

「それもだけど、胸回りが全然違うじゃん。私のワイシャツ着たら絶対ボタンが弾け飛んじゃうよ~」


 静香と同じ性別の天音を羨ましそうに見るメアリー。

 同じ制服だからってオソロな感覚がない静香には分からない感覚だった。


 天音が交換を提案するものの、身長や胸回りが違い過ぎるためメアリーは渋々断念することにした。


 天音の制服をメアリーが着ようとしたら、そもそも小さすぎて着ることができないだろう。


「でもセーラー服のメアリーって新鮮だよね~。こんな淫乱女子高生なかなかいないよ~」

「どこが淫乱だ。我は普通に着てるだけだぞ」

「だってセーラー服がおっぱいからはみ出してるんだよ。これはエロいよ」

「……胸なんてただの脂肪だぞ。静香もそう思うだろ」

「ちょっ……なんで私に女の子の胸の話を振るんですかー」


 セーラー服姿のメアリーを見て天音はニヤニヤする。


 本当は天音を叱りたいのだが、静香もセーラー服からおっぱいをはみ出しているメアリーはエッチだと思う手前、天音になにも言えなかった。


 もちろん、メアリーに『淫乱』という自覚はないらしい。当たり前だ。


 あったらあったで、それは変態だ。


 女の子がよく言う『胸なんてしょせんただの脂肪』理論を振りかざすが、男の性というべきか、静香も女の子の胸には性的魅力を感じてしまう。


 そのため、メアリーのキラーパスを受けた静香は動揺してしまい逆ギレをしてしまう。


「メアリー、そんな質問男の娘の静香にはしちゃいけないよ。男の娘はみんな女の子のおっぱいが大好きだからね~」

「そうなのか? 静香」

「天音ちゃんも変なこと言わないで。メアリーさんもこの話はもうお終いです」


 もし殴っても許される世界なら、今すぐニヤニヤしている天音の顔面を思いっきり殴りたい。


 メアリーは女性ということもあり、女性の胸を見てもなにも思わないのか不思議そうな表情を浮かべている。


 反応に困った静香は天音を叱責し、話題を終わらせる。

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