8、本当に最後のダンス
結局、世界選手権は2位と言う成績で終わった。俺達は燃え尽きた。もう、後はないのだ。
何かを後悔しても反省をしても、やり直す事はできない。潔く負けを認めて勝者を祝福するしかなかった。
それが、敗者の礼儀でありけじめだ。
そして、妹は部屋を出ていった。取り敢えず実家に戻ったが次期、一人の部屋を借りて移り住んだ。
その後、妹は白川とペアを組んだ。それまで、いろいろ問題もあった。もう、ダンスを辞めるとまで言いだした事もあった。やはりお兄ちゃんとじゃなきゃ踊れない…と…
また、妹の俺を讃えてくれる椿節が、炸裂した。
俺は嬉しかったが、それでは本末転倒だ。何の為にペアを解消したのか、わからない。
俺と千晴、両親まで加勢をして、ようやく妹と白川を引っ付けた。本当に、最後は無理矢理だった。
みんな、何とか椿にダンスを続けて欲しかったのだ。
しかし、やってみると意外と相性が良かったのか、みるみる、日本選手権、世界選手権と勝ち進み、あっという間に世界王者に上り詰めてしまった。
俺と千晴もペアを組んだが、俺達はあっちの愛称が、良すぎて、少々、競技の方が疎かになってしまった。
ランキングも、少しづつ下がり、最後は平凡な成績で引退した。
今は両親の後を引き継ぎダンススタジオの運営をしている。最近は両親も時々スタジオに顔を出すくらいで俺と千晴で切り盛りしている。
そう、俺と千晴は結婚した。
今は、男の子と女の子の双子の親だ。子供達は既にダンスを初めている。この二人を見ていると、あの頃の椿と、俺をつい、思い出してしまう。
ひたむきだったあの頃を…
「お兄ちゃん!ただ今.!
あっ、千晴ちゃん!これ…お土産…」
「おかえりなさーい!遠征…お疲れ様!
わーっ!いつも、ありがとう!
七海!七草!椿おねーちゃん来たよー!」
「わーっ!おねーちゃーん!」
「おばちゃーーん!」
「コラッ!七草!いつも言ってるでしょ!
おばちゃんじゃないの!
おねーちゃんって言いなさい!
わかった!」
「うん!おばーちゃん!」
「こらー!」
「キャハハハッ!」
「きゃっ!きゃっ!」
千晴は子供達を連れて夕飯の用意の為に先に帰った。俺は事務処理を済ませてから帰宅だ。
「今夜、ウチで飯食って帰れよ!
千晴が何か用意してくれてるはずだから…
何なら白川も呼んだらいい!」
「わーっ!嬉しい!ゴチなりまーす!
って、言うか白川さんも遠征から
帰ってきたら色々忙しいみたいだから…
彼は、いいよ!
ふふふっ!それにしても本当に可愛いね。
二人とも…。
でも、千晴さんは大変だったね…
いっべんに二児の母だもんね!
でも、何か…思い出すね…あの頃…
遊びの延長でダンスもやってた…
あの頃が一番…楽しかったね。
何も難しい事、考えなくて…夢中で踊ってた。
あーあ、でも、本当に、おばちゃんなんだよね!
歳取る訳だ。」
「椿は変わってないよ。
なーにも、変わってない。
見た目も内面も、昔のままだ…
あの頃と、同じ…綺麗なままだ…」
「またまた…またぁ…
お兄ちゃん…ウフッ…
嬉しい事、言ってくれるんだから…
よく妹に、そんな事、照れずに言えるね!
昔から、そうなんだよ!
男臭いかと思ったら、時々そう言う事
ボソッと言うんだよ…
意外性なの!
そんな事、言わない感じの人から
そう言う事言われたら……
女の子は…ダメになっちゃうの!」
「俺、女性をダメにしちゃうタイプなのか!」
「そうだよ!気をつけなさい!
千晴さんは、しっかり者だから
大丈夫だったんだろうけど!
私が第一被害者だからね!
お兄ちゃんにダメにされた女1号!」
「ええ!俺がいつ、オマエをダメにした!
真っ当な人間にしようと日々努力したはずだぞ!」
「ハハハッ!
冗談よ…感謝してるよ…お兄ちゃんには…
ううん!感謝しても…しきれないよ…
私の人生の全てを支えてくれた人だもの…」
「そんな事ないだろ!
パパやママだって、白川も…千晴だって…」
「そうね…
みんな、私を応援してくれた。嬉しかった。
ありがたかった。
でも、いつも、私の心にいたのはお兄ちゃんだった。
遠征に行っても大会に出た時も白川さんの中に
お兄ちゃんの面影かをうかべて踊っていた。
お兄ちゃんと踊っているつもりで演技した。
私って、下衆な人間でしょ…
これ程、ペアを裏切り、侮辱する行為が他にある?
私はずっと、それをやっていた。
白川さんを裏切り欺き
何年も、それを続けてタイトルを手にしたの…
恥ずかしいわ!
今、お兄ちゃんの顔が、まともに見れない。
花咲家に泥を塗るような行為を私はしたのよね…
ねっ!私……ダメな女でしょ!
だから…ダメ女1号!」
そう言いながら妹が、俺の膝に腰掛け首に手を回してきた。
「つっ、椿!
どうしたんだっ?」
「お兄ちゃん…ダンス…踊ってください…
最後の……ダンス…
お兄ちゃんと私の…ラスト…ダ、ン、ス 」
そう耳元で囁いた。
音楽が鳴り始めた。
「タブー」
と言う情熱的な曲だ。
椿がピンヒールで華麗なステップを踏みながら腕を振り近づいてくる。俺は胸を張り回転しながら椿の腰をホールドした。
早い足捌きでスライドステップして行く。二人の影が一致した。音楽もライトも空気も二人を包む全てが一つになった。
竜巻の様に回転しながら舞った。もう何も無かった。躊躇も、隔たりも、我慢も、諦めも、挫折も、後悔も、反省も、全てし終えた後だ。それは、もう、昔の事だ。
二人には、もう、何も無かった。無さへ、無かった。
曲が終わった。その瞬間、ピタリと二人の動きが止まった。フロアに静けさが戻った。エアコンと二人の高鳴る吐息だけがした。
その時、椿が床に崩れ落ちた。
「椿、大丈夫か!」
俺は妹を抱き起こそうとした。するといきなり妹が、抱きついてきた。
唇が重ねられていた。
二人の初めてのキッスだった。
俺はそれを受け止めた。
拒否する理由が無かった。
俺も、ずっと、こうしたいと思ってきたのだ。
これを望んできたのだから…
長いキッスが、終わると妹が耳元で囁いた。
「お兄ちゃん…本当のラストダンス…
最後にお願いします。」
その意味は痛い程わかっていた。
妹は横になったままスカートの裾に手を入れるとショーツを自分で下げて脱ぎ取り、丸めて脇に置いた。
「来て!お兄ちゃん…私のお願い叶えて…
一度だけでいいから…」
俺は何も言わず妹の上に重なった。
白い脚の間に割って入った。
もう、妹の準備は出来ていた。
また、キッスをした。
そして、ゆっくり妹の潤いの中に入っていった。
妹が泣いている。
むせび泣いている。
俺も泣けてきた。二人とも激しく腰を振った。
最後のダンスだからと言わんばかりに
腰をグラインドさせリズムを合わせた。
そしてクライマックスが訪れた。
嵐の後の様に、また静寂が訪れた。
また、エアコンのノイズだけが聞こえている。
そして、真っ暗な部屋に二人だけの囁きがしていた。
「椿…
「何…お兄ちゃん……」
続く




