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それはタブーと呼ばれたラストダンス  作者: 桂虫夜穴


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5/13

5、妹の手痛い一発!


「良い感じだったじゃないか…椿ちゃん!

以前のキレが戻ってきたんじゃないか。

もう完治してるんだろ…ケガのほうは…

ホレッ!」


 ペットボトルを放り投げながら話しかけてきたのは、白川啓示。親友であり最高のライバルだ。

 幼い頃から、このスタジオで共に遊び、学び、競ってきた。


「サンキュッ!

まぁな…そっちは、なんとか…

ただ、精神面がな…

ネットの書き込みで気が滅入ってるんだ。」


「そんなの、薫…おまえ次第だろ!

精神面も支えるのが、おまえの役目だろ…

それが兄貴ってもんだろ。

ペアのリーダーって、もんじゃないのか⁉︎ 」


「そんな事、おまえに言われなくてもわかってるさ!

だから、こうして苦労してるんじゃないか!

何か、見えない壁を突破しようと

もがいてるんだろ!」


「おまえは、ストイック過ぎるんだ。

ここだけじゃなくてプライベートでも

色々自分に課しているんだろう。

窮屈過ぎるんだよ。

禁酒禁煙は、いいさ!

体幹の為には必要な事だ。

しかし細かいルールを作って

椿ちゃんにも

それを実行させているそうじゃないか!」


「俺達は究極の領域を目指しているんだ。

そこまでしなければ、そこには辿り着けないんだ。」


「はたして、椿ちゃんが

そこまでを望んでいるのかね…

俺には、おまえと一緒にいれるだけでいい。

そんな風に思ってるように思えるけどな…」


「そっ、そんな…それじゃあ、俺達が今まで…

必死で積み上げできたモノは

全て無意味だったって言いたいのか?」


「そうじゃない。今まで積み上げてきたものは

これから生きて行く上での礎になるし指針になる。

決して無駄なものじゃない。

これを元に新たな方向性を導き出すのも

一つの考えだと言ってるんだ。

延々と、しがみついているのも、どうかと思うぞ!」


「そっ、そんな簡単に片付けるな!

そんな…簡単な…ものじゃ、ないんだ。

俺達には…」


「おまえにとっては…だろ!」


見透かされた!思わず立ち上がっていた。

掴みかかっていた。


「うわーっ!白川てめぇー!」


そこへトイレから戻ってきた妹が、慌てて間に割って入った。


「きゃあ!どうしたの⁉︎

お兄ちゃん!やめてっ!

こんなのお兄ちゃんらしくないっ!」


俺の背後から、もう一人女子が止めにかかっていた。冬本千晴だ。彼女も幼い頃から、このスタジオで学んだ門下生だ。

 何でも知っているのだ。俺の事を……

それが今は恥ずかしかった。


「椿ちゃん…ごめん…俺が…

薫を挑発するような事を言ったから…」


 白川が、素直に頭を下げた。負けるが勝ちをいち早くやり遂げた。俺はいよいよ居た堪れなくなった。


「それにしても、手を出すなんて

お兄ちゃん!白川さんに謝って!」


いつになく妹の口調が強く…

鋭く胸に突き刺ささった。


「おっ、俺が…悪いのか…やはり…そうなのか…

椿……ワーーッ!」


 俺はフロアを飛び出した。丁度、玄関口を入ってきた母親とすれ違ったが、そのままドアを飛び出した。

 母親は何事かと、言う顔をしたが、その後すぐ妹が後を追って来た。

 しばらく走ってバス停の辺りで妹に手を掴まれた。強く引っ張られ振り向くと…


"パシッ"


手痛い一発が飛んで来た。


 もちろん初めての事だ。妹に頬を張られるなど。妹に対して俺がそれをした事もない。

 二人にとって初めての事が今、突然、起きたのだ。


そして、妹は俺の腕に飛び込み拳で、俺の胸を叩きながら叫んだ。


「ばかーっ!お兄ちゃん!急に飛び出して

事故でも会ったらどうするの!

歩道だって、自転車も歩行者もいるのよ!

ぶつかったら、どんな事になるか!

私のケガで、懲りたんじゃないの!

ケガした私が言うのもお門違いかも知れないけど…

今から大事な時期なんでしょ!

ケガなんかしてられないんでしょ!

うわあぁぁ〜〜!」


 返す言葉がなかった。妹の肩をさすりながら背中に腕を回し強く抱きしめた。 

 1ミリの隙間もない程密着した。妹の腕も俺の腰に回っていた。

妹の甘い髪の香りがした。それを思い切り吸い込んだ。その瞬間だった。

 "リンリン"自転車のベルが鳴った。

 

 歩道の真ん中で抱き合っていたのだ。慌てて離れた。歩行者も大勢いた中の抱擁だった。

 妹は頬を真っ赤に染めてスタジオの方に歩きだした。


「椿!待ってくれ!俺も行く!」


追いかけると、妹は大股早足で無視するように歩いていく。


「もういい!お兄ちゃんは

そのまま家に帰ればいいわ!

もう、私は知らない!」


「そんな事言うなよ!俺が悪かったよ!

ごめんなさい。白川にも謝るから…

もう、勘弁してくれよ!」


突然、妹が立ち止まったので、思わずぶつかりそうになった。


「わっ!どうした?急に止まって…」


「それなら、許してあげる!

フフフッ!」


「そっ、そっか!

良かった!よし!

練習再開だ!行こう!」


「うん!お兄ちゃん!」


二人共、笑顔で走った。




ひと時前のスタジオフロア。


「あっ、お兄ちゃん!待って!

白川さん、ごめんなさい。

お兄ちゃーん!」


椿が薫の後を追って玄関に向かった。


「どうしたの白木くん。君こそ珍しいな。

そんな事した事、ないじゃない」


冬本千晴の指摘に白川が答えた。


「アイツら見てるとイライラするんだよ。

薫がちゃんと椿ちゃんをリードしてあげないから…」


白川は膝の上で拳を強く握り締めた。


「自分だったら、ちゃんとリードしてやれるのに

…って、思ってるんだ。

ダンスでもプライベートでも…」


千晴がニヤッとして言った。


「千春!そっ、それは…」


「図星なんだ……

でもね。私も、控えてますよ。

こんな間近にいるのに…

こんなイイ女を見逃しますかね!

灯台元暮らしですよ…」


千晴が腕を組み胸を強調しながら言った。


「ええっ⁉︎ …そっ、そうだな…

って、言うか!小悪魔全開させるなよ!

勘違いするだろ!」


「フフフッ!

面白いんだ。

さあ、私達はレッスン初めましょうか?」


「ああ、そうだな…」



続く

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