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それはタブーと呼ばれたラストダンス  作者: 桂虫夜穴


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3/13

3、妹の思いと本心


私は、自宅に帰っていた。

兄には、友達の家に泊まると言った。

仲の良い友達はいたが

突然泊まりに行くなどと言う非常識な事は出来ない。

そもそも、そんな経験がないのだ。

一度でも、お邪魔した事のあるお友達のお家なら

それも出来たかもしれないが…

今夜は親に頭を下げて実家に戻るしかなかった。


親に二人で暮らす事を何とか認めて貰った。

責任を持って生活をする事。

当たり前の数々の条件を出された。

仲違いしない…それは、基本中の基本。

第一条件だった。

その約束事を破り、今、こうして…

実家の自分の部屋のベッドに座っている。

母親には忘れていた荷物を取りに来たと嘘を言った。

嘘を言わない…

これは、幼い時にした初めての約束だ。


何もかも思い通りにいかなかった。

いかなくなっていた。

日本選手権…あれが、私の頂点だったのだ。

それからは、頭打ちだ。

伸び悩み?そんな単純なものなのだろうか?

マインドから違っているのでは、ないだろうか…

気持ちだけが先走っている。

それは焦り…それこそが

私を停滞させている要因ではないのか?


お兄ちゃんに、ついて行きたい。

ピッタリくっついて…

そう、まるで小判鮫みたいに…

お兄ちゃんに降りほどかれないように…

必死にしがみついている私がいた。

結局、私は、その手を離してしまった。

怖かった。

お兄ちゃんのスピードが…高い技術が…その精度が…

私の入り込める余地のない程の迫力で迫って来た。

だから、私はその手を離したのだ。

振りほどけたフリをしたんだ。

本当は故意にやったのだ。もう、無理だと…

そしてあの事故だ。

お兄ちゃんは自分自身を責めた。

私は「私が悪い。私の自己責任だ」と訴えたが

お兄ちゃんは聞く耳を持たなかった。

ペアがケガをすれば、どんな状況で、どんな状態で

どんな環境であっても

リードする人間の責任なんだと

お兄ちゃんは自分を責めた。


私にとっては、それが負担になった。

もう、逃げ出したくなった。

私とお兄ちゃんの距離は

余りにも遠くなってしまった。

お兄ちゃんとの間には

高くて果てしなく厚い壁ができてしまった。

決して越える事の出来ない壁。

登る事も渡る事もできない究極の壁が…


兄は世界を目指している。

でも、私は、尻込みした。

そんな事が実際、可能なのか?

世界のダンスムーブメントと渡り合っていけるのか?

お兄ちゃんなら、それが、できるだろう。

しかし、私はどうなんだ?

後、ワンステップ越えなければそれは、無理だ。

しかし、たった、その一歩が前に進めないのだ。

絞り出して絞り出した最後の一滴が

日本選手権だった。

もう、何も残ってないのだ。


今の私は絞りカスなのだ。

残りカスなのだ。




お兄ちゃんにとってダンスは

この世で一番大好きで大切なモノ。

これから世界に挑戦して

タイトルを勝ち取って行く実力も兼ね備えている。

私はその横でその光景を

一緒に見続けて行くものとずっと思っていた。

それが当然の私の権利だと思っていた。

しかし現実は、そんな甘いものじゃなかった。

力がなければ、そこに留まる事は出来ないのだ。

淘汰されて行くのだ。


関係者、連盟スタッフの陰口。

そして、SNSやお兄ちゃんのファンからの

躊躇なき誹謗中傷。


私は疲弊していた。

心が(すさ)んでいた。


ヘタクソ!足手まとい!お荷物!

と、叩かれた。

死にたいと思った。


一番大切な人の役に立ちたいと思っているのに…

ずっと願っているのに……

その人の足を引っ張り、邪魔をしているのだ。

その事を他人から指摘される。

こんな残酷な事があるだろうか…


私はこの身を引かざるおえなかった。


愛するお兄ちゃんの為に…


愛する人の将来の為…


愛する人の未来の為に…




私はお兄ちゃんを愛している


兄として…


そして、一人の男性として


狂おしい程に愛している



花咲 椿  は…


お兄ちゃんを愛してしまった。


愚かな…女なんです。


女…そのもの、なのです。



続く

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